スタッフ
監督:イヴ・ロベール
製作:イヴ・ロメール
脚本:イヴ・ロベール、ピエール・レヴィ・コルティ
撮影:ルネ・マテラン
音楽:ウラディミール・コスマ
キャスト
アレキサンドル / フィリップ・ノワレ
彼の妻 / フランソワーズ・ブリオン
アガタ / マルレーヌ・ジョベール
サンガン / ポール・ル・ペルソン
アンジェール / アントネッラ・モーヤ
コルベール / ピエール・リシャール
ピントン / ジャン・サダラ
マリコーヌ / マルセル・ベルニエ
ボアソー婦人 / マドレーヌ・ダミアン
日本公開: 1973年
製作国: フランス マドレーヌ・フィルム、ラ・コロンブ作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
二回ほど、のどかだが厳しい田舎生活の現実を綴る映画を扱ってきた。今回も田舎に暮らす人間たちの日常を描いた作品を選んでみた。ただし、コメディ。フランス人の個性と自由を端的に表した、牧歌的で郷愁を誘う作品。
フランス 中部クール=エ=ロワール地方力持ちだが気弱な農夫ガルトン(フィリップ・ノワレ)は、徹底的に彼を管理し、こき使う妻(フランソワーズ・ブリオン)に閉口しながらも、それなりに生きていた。
しかし、彼の個性なり意見は一切無視され、少しでもサボろうとすると、何故、解るのかというタイミングで『働け』と命令される。膨大な量のカボチャの収穫が終わると、休む間もなく敷地の杭打ち。しかも、夜は夜で奉仕しろと、恐ろしく強制してくる。彼を好きな村の仲間らもいるが、妻はそんな村民らにも容赦なく接する。
ある日、ガルトンは、友人から子犬を貰う。しかし、妻にバレてはマズいので、隠して飼おうとするが、そんなことは不可能。それでも、子犬だけはと懇願し、何とか許可してもらう。
そんなある日、妻と彼女の両親がガルトンをおいて、出掛けたが・・・
自由に憧れながら拘束され続けた農夫の人生を謳うコメディ。
力持ちでタフという肉体的強みだけで結婚できた農夫。本来は怠け者だ。それを知った上で、彼を顎で使う妻と彼女の両親。
そんな妻と両親が揃って他界したことから主人公にパラダイス時間がやってくるというブラック・ユーモア的展開。
当初、村の仲間たちは心労で寝込んでいるのだと心配するが、あまりにも度を越したサボリ癖だと気付き閉口し始める。
何せ、農業しかない村で、農産物の育成や収穫も無視し、ひたすら寝るだけという退廃さを絵に描いた男になるのだから。
しかも、主人公に飼われている犬が、主人公の代わりにお使いまでするから、更に始末に悪い。
やがて、主人公に感化され、怠け癖の人間が村中に、はびこってくるという展開。
そこに、若き美女が村にやって来るが、彼女も主人公同等の怠け者。同じ価値観とばかりに主人公に近付きたいという、妙な展開まである。
あくまでコメディであるが、時間に追われたり、真面目に生きるより自由な生活を尊重するフランス人らしい発想。
前半で、これでもかと、こき使われる主人公に、どこか愛おしさを感じていたが、中盤から突然の怠け者になる姿は、日本人には素直に受け入れらない人もいると思う。個人的には、怠け者の性質は近いので、微笑ましく感じたが。
確かに個人主義で、勝手にひとりでサボることが好きな人間も結構いるとは思うが、コミュニティに蔓延すると話は別。
そこで主人公がラストに向け取っていく行動がカギとなる。
内容的にはジャン・ルノワールの詩情溢れる秀作「素晴らしき放浪者」(1932)のリメイクとも取れる内容だが、監督が「わんぱく戦争」(1961)という少年たちの闊達な日常を描いたイヴ・ロベールなので、別な味わいがある。
登場キャラの中では、圧倒的に主人公の飼い犬のポインター犬が最高。子供と動物には勝てないというセオリーがいかんなく発揮されている。
のどかさと大らかさが混在する牧歌的コメディ作品。