スタッフ
監督:ジャン・ピエール・メルヴィル
製作:ジャック・ドルフマン
脚本:ジャン・ピエール・メルヴィル
撮影:ピエール・ロム
音楽:エリック・ド・マルサン
キャスト
ジェルビエ / リノ・ヴァンチュラ
ジャルディ / ポール・ムーリッス
マチルド / シモーヌ・シニョレ
ジャン・フランソワ / ジャン・ピエール・カッセル
ビゾン / クリスチャン・バルビエ
フェリクス / ポール・クローシェ
マスク / クロード・マン
ドゥナ / アラン・リポール
床屋の主人 / セルジェ・レジアーニ
日本公開: 1970年
製作国: フランス レ・フィルム・コロナ作品
配給: 東和
あらすじとコメント
「パリは燃えているか」(1966)では、いかにレジスタンスが活躍し、パリを解放したかを描いていた。今回もレジスタンスの話。だが、内容は完全にフィルム・ノワールで、非情なまでの「掟」をメインに描いた秀作。
フランス、中部あたり1942年、ドイツ占領下でレジスタンス活動の疑いを掛けられたジェルビエ(リノ・ヴァンチュラ)は、フランス管理の収容所に収監された。
何も語らず、かといって、それなりに従順な言動を示す彼に対し、所長は幹部ではないかと推定し、身柄をドイツのゲシュタポに引き渡そうとした。だが、ジェルビエは隙を突いて脱走し、何とか仲間の待つマルセイユに辿り付いた。
すぐさま、彼は自分を売った仲間を探しだした。その仲間は十代の青年であったが、彼は・・・
マフィアのような『血の掟』を持った闘士たちの実話を描いた秀作。
レジスタンス組織の幹部である主人公。物静かだが、的確に相手の人間性を素早く読み、機を見て敏捷に行動するタイプ。
しかも、己の立場が優先と見るや、他人を生贄のように扱う。何とも怖い男だ。
そんな主人公が、脱走成功後、真っ先に行うのが密告者殺害である。当然、若いレジスタンス仲間にも、ナチス以上に怖い存在であり、それこそ命懸けの行為であると教え込ませる。
続いて、信頼する仲間内から紹介され、新たに闘士と加わってくる男女が登場してくる。
しかも、その二名の行動がクールで格好良い。対独というレジスタンス組織でありながら、ギャング組織と同じ匂いがする。
完全にフィルム・ノワールの世界である。だが、本作がノワールでありながらも異質だと感じさせるのは、通常、女性は添え物で、男だけの世界での行動美学なのが、女性が主翼を担っていること。
しかもその女が男以上に行動派である。ただし、やはり男女の違いが浮き彫りにされ、複雑な心境に陥らされる。
しかも、ドイツ側が、どれほど非情であるかは直接的には描かれず、それよりも仲間内での「ケリのつけ方」がメインに描かれる。
そこに、ジャン・ピエール・メルヴィル監督の陶酔するようなドライな空気感が漂う。
個人的には、「冒険者たち」(1967)のロベール・アンリコ監督作品のクールさは、草木のある自然の中の冷たさであり、メルヴィルは都会派というか、石造りの極北の冷たさが増幅される作品が多いと感じる。
出演陣も大好きなリノ・ヴァンチュラを筆頭に、彼以上に異様なまでの冷たさを際立たせるポール・ムーリス、途中から仲間に加わるジャン・ピエール・カッセルも素晴らしい。
しかし、本来異質な立場である女性の強さと脆さを刻み付けてくるシモーヌ・シニョレの存在感は鳥肌が立つ。
途中、このシークエンスに、そこまで時間を割く必要があるかと思わせる個所もあるので、意図したいことが散漫になったという感も否めないが、それでも、実話として、当時、祖国に居ながら虐げらていたレジスタンスというか、フランス人の心意気と冷たさを嗅ぎ取るには絶好の作品。