スタッフ
監督:クライヴ・ドナー
製作:ジョン・ブライアン
脚本:リネット・ベリー
撮影:アーネスト・スチュワート
音楽:クリフトン・パーカー
キャスト
モリー / ベリンダ・リー
カーター / ロナルド・ルイス
フレディ / マイケル・ブルック
ワーリング / マイケル・グィン
ヘイウッド / ジェフリー・キーン
ヘイウッド夫人 / モーリーン・プライヤー
ウィルソン / デヴィッド・マッカラム
パディ / ジョージ・セルウェイ
ハリー / ジョージ・A・クーパー
日本公開: 1957年
製作国: イギリス ロンドン・フィルム作品
配給: 東和
あらすじとコメント
少年が、偶然知ってしまう大人たちの事情。今回は犯罪が絡むサスペンス映画で繋げた。小品ながら、いかにも往年のイギリス映画らしいクライム作。
イギリス、ロンドン思春期真っ盛りの14歳になるフレディ(マイケル・ブルック)は、年上で煙草屋に勤めるモリー(ベリンダ・リー)に、思慕の情を抱いていた。
だが、モリーは貧しい家庭環境から逃げだすべく恋人のカーター(ロナルド・ルイス)との結婚を願っている。ところが、その恋人が宝石強盗を計画していた。彼女もそのことを知ってはいるが、止めさせることも出来ない。
強盗準備が進む中、頼りにしていた仲間が、カーターのプロ意識が低いと降りてしまったり、次々と問題が発生し、頓挫しかける。それでも強硬に計画を進めようとカーターは、警官の制服が必要だとモリーに打ち明ける。
彼を愛するモリーは、フレディの父親が警察官だと言いだして・・・
少年が図らずも犯罪に巻き込まれるB級クライム作。
憧れの女性からの依頼で、父親の制服を密かに貸すが、それが犯罪に使用されたことを知る少年。
思慕を抱く対象が犯罪者の仲間であると知り、ショックを受けるのは当然。
一応、少年に気を遣うヒロインは、後ろめたさからポータブル・レコード・プレイヤーを上げようとするが、彼氏がそこに強奪したダイヤを隠すから、更に大変なことになっていく。
ツッパっているが素人犯罪者の彼氏。逃走用に依頼したプロの運転手には降りられ、代わりにヒロインの大人になりかけの弟が、背伸びして立候補をしたりするから、益々、頼りない集団になっていく。
それゆえ、実際の強盗シーンも機転が利かず、こちらをハラハラとさせる。計画性があるようで場当たり的犯行しか出来ぬ性格の彼氏。
こちらは、そんな性格を刷り込まれているから、後の少年への態度も想像が付くというサスペンスを盛り上げる。
やがて少年が隠してあるダイヤに気付き、正義感から別な場所に隠す行動にでれば、どういう風に映画が転がっていくかは想像付くだろう。
ただし、編集者出身の当時若干30歳のクライヴ・ドナー監督の若すぎる演出が、前のめりというか、空滑り感が前面にでてしまい、この手の作品としては間延び感が否めない。
当時、イギリス製サスペンスで、少年が巻き込まれるという作品は、未公開ながら佳作が多いジャンルでもあった。
例えば、若き日のダーク・ボガードが主演した、図らずも殺人を犯した青年が身寄りのない少年と、国境を目指して逃避行する姿を独特の乾いたタッチで綴る「Hunted」(1952)。
また、「ナバロンの要塞」(1961)のJ・リー・トンプソン監督デビュー作で、一緒にいた友達が転落死する現場を犯罪者に見られ、お前が突き落とすのを見たぞと脅迫され、犯罪の片棒を強制的に担がされる少年を、戦後の廃墟が残るロンドンの裏町を非常に効果的に用いた秀作「The Yellow Baloon」(1953)など、流石のイギリス映画黄金期という作品群を知っていると、否が応でも比較してしまう。
スターや名脇役の出演もなく、手慣れたヴェテラン監督の力量も感じられない小品だが、この手のイギリス製B級クライムは多かったよな、と思い出に浸れる作品ではある。