スタッフ
監督:ロバート・マリガン
製作:リチャード・A・ロス
脚本:ハーマン・ローチャー
撮影:ロバート・サーティス
音楽:ミッシェル・ルグラン、デヴィッド・シャイア
キャスト
ドロシー / ジェニファー・オニール
ハーミー / ゲーリー・グライムス
オシー / ジェリー・ハウザー
ベンジー / オリヴァー・コナント
アギー / キャサリン・アレンタック
ミリアム / クリストファー・ノリス
薬剤師 / ルー・ブリッセル
ドロシーの夫 / ウォルター・スコット
ナレーション / ロバート・マリガン
日本公開: 1971年
製作国: アメリカ R・マリガン、R・A・ロス・プロ作品
配給: ワーナー・ブラザース
あらすじとコメント
思春期の若者。夢を見いだし、それに賭け成功する映画を続けてきた。今回は夢に賭けるのではなく、思春期特有の異性への思慕を描いた作品にしてみた。しかも、若者は綺麗な年上の女性に憧れるのも特徴。そんな青春を瑞々しく描く佳作。
アメリカ、ニューイングランド第二次大戦下、1942年の夏。15歳になる高校一年のハーミー(ゲーリー・グライムス)は、家族らと小さな島で過ごしていた。日々、何もすることもなく、同じ年のオスキー(ジェリー・ハウザー)、ベンジー(オリヴァー・コナント)の三人で、只々、悶々としていた。
尤も、悶々とするのは退屈なだけでなく、異性に芽生えた感情の高ぶりも含めてのことでもある。しかし、その欲望を発散する勇気もなく、ひたすら想像の世界を彷徨うのが関の山でもあった。
そんな三人は、海が見渡せる丘の小さな一軒家に住む美人の人妻ドロシー(ジェニファー・オニール)の清廉さの中に立ち昇る大人の色香に興味津々だ。特にハーミーの惹かれ方は相当なものであった。しかし、遠くから見つめることしか出来ない。
そんなある日、ハーミーは買い物をし過ぎて途方に暮れているドロシーを見つけて・・・
甘く、ほろ苦い青春の一ページを描く青春映画の好編。
思春期の男子たち。頭の中は異性への興味で一杯。しかし、情報量が圧倒的に乏しく、現代からすると想像だに出来ないような時代。
男女の肉体差もロクに知らないのだ。仲間の家にある医学書がバイブルであり、親に見つからないように持ちだしては隠し読みして大騒ぎする。
娯楽は映画を見ることぐらいだが、それだって、夏を通して同じ映画しか上映していないような小島。
当然、飲酒はご法度。現在と違い、本当に情報も楽しみもない時代。まして戦時下である。
そんな島での少年三人の日常が描かれていく。もどかしいというか、可愛いらしいという進行である。
同年代の少女たちと知り合い、お互いが急激に「異性」として認識し合ったりと、何てことない青春の一コマが切り取られる展開。
そんな中で、見事『大人』になる者、失敗する者と様々だが、出征した夫を持つ人妻と主人公の関係に変化が生じてくる。
世界中で数多く制作されてきた『大人へのステップ』モノの一遍であるが、ストーリィとしては目新しいものは一切ない。
ただ、ありきたりの内容をどう捌いていくのかに注目せざるを得ないのだが、本作の特徴は映像と音楽。
成長過程の青年の話なので、リズム感を崩す、アッと驚くようなショッキングなショットなど必要ない。それでいて、さりげない長回しやカッティングの変化が、時代性を見事に反映して心地良いリズム感を醸しだしている。
また、通常なら主人公の両親なり、訳知りな大人たちが、主人公を見守ったり、叱責したりするのだが、敢えて、そういった大人を極力排除し、余計な想像をさせないという筋運びも好感が持てる。
そういう計算された『さりげなさ』が連続し、やがてクライマックスでのヒロインと主人公の場面に於いて、一挙に昇華する。
俳優陣では、ごく普通で、何ら個性のない主人公を演じるゲイリー・グライムスのどの場面でも主張しない演技が印象的。
ヒロインを演じるジェニファー・オニールのクライマックスで見せる大人だからこその、少年には絶対理解できない『女の寂しさ』を、ふと漂わす表情も忘れ難い。
何てことない、ありがちの作品ながら、印象を長く引き摺る佳作である。