先立て、親戚がやって来た。久方振りの再会で、夜は奢ってくれるというので喜び勇んで付いて行った。
店は、あちらの要望でチェーン展開する寿司屋。回転寿司よりは上等である。何よりも、昨今は回転する寿司も疎遠なので、少しは心躍った。
存在は知っていたが、初めて入る店。清潔感もあり、それなりに高級感漂う店内だが、何だか映画のセット的。メニューも、価格表示のない寿司屋よりも、かなり良心的とはいえ、中途半端に高い印象。やはり、寿司屋だからだよな。
案内されたのは二階の奥部分で、厨房設備の真裏。早目の時間だからか、それなりに広さがあるのに、20歳位の新人君と40歳近いベテランの女店員の二名で廻しているようであった。
メニューを見ていたら、バックヤードから、ベテランさんが新人君に、おしぼりの出し方やら注文の尋き方を教えているのが聞こえて来た。
どうやら自分らの担当は新人君。慣れない印象だが、それなりに対応して来たので、ある程度は飲食店経験者と見受けた。
朴訥とした印象で、嫌いではない。どことなく、昔の集団就職で東京に初めて上京し、不安もあるが頑張ろうとしている昭和的印象すら覚えた。
問題はベテラン店員の方であった。そこの店が長いのか、テキパキと仕事をするのは宜しいが、せわしい。これから忙しくなると踏んだのか、客が来ると奥から詰めさせる。
動きは機敏で、テーブル上の飲食の進捗具合を流し目で見つつ、空いた皿などを持てるだけ持ち去り、飲み物の追加注文を尋いて行く。狭いテーブルなので親切ではある。
後発グループが次々と注文し、盛り上がる頃には、こちらは食べ終わり、ゆっくりお茶でも飲もうと思っていたが、卓上は何も残っていない。まるで、長居するなという圧迫感。
それがチェーン店的接客マニュアルなのだろうか。しかも、確かに『仕事してます』的印象はある。
親戚も同様に感じたのか、早目にお茶を飲み干すと席を立った。すると店内は、奥部分だけ満席で他はガラガラという状況。
その落差に驚いた。漂う空気の多さも違って感じたほど。その時に小さく頭を下げ、見送ってくれたのは新人君だった。
君に、この店は向かない。それとも、それが、現在どこでも主流で、行く行くはそういう接客が身に沁みついていくのだろうか。
寿司の味だって思い出に残るものではない。きっと、仕入れ代よりも内装費の減価償却がメインなのかもな。寿司も、味や内容よりも見た目優先だった。
奢りだから行ったが、絶対に二度目の再訪はないな。
まあ、回転寿司すら行けない身分としては、今後の人生から「寿司」の選択肢そのものがないのかもね。