スタッフ
監督:ロバート・マリガン
製作:バート・シュガーマン
脚本:チャーリー・ピータース
撮影:ドン・ピーターマン
音楽:ラルフ・バーンズ
キャスト
ケイ / サリー・フィールド
ヴィラーノ / ジェームス・カーン
ベインズ / ジェフ・ブリッジス
シャルロッテ / クレア・トレヴァ‐
ケンドール / ポール・ドゥーリー
エミリー / ドロシー・フィールデイング
ライリー夫人 / ミルドレッド・ナットウィック
ホリス牧師 / ウィリアム・プリンス
ビリー / マイケル・エンサイン
日本公開: 1985年
製作国: アメリカ ブロードウォーク・プロ 他 作品
配給: 20世紀オックス、シネセゾン
あらすじとコメント
前回は、先妻の幽霊が夫婦を苦しめるコメディを扱った。今回は、その「陽気な幽霊」(1945)にインスパイアされたラブコメ。ただし、幽霊となって登場するのは元亭主で、いかにもアメリカ的作品。
アメリカ、ニュー・ヨークライターのケイ(サリー・フィールド)は、3年前に夫であったブロードウェイの有名振付師ヴィラーノ(ジェームス・カーン)を亡くしていたが、このたび晴れて考古学者のベインズ(ジェフ・ブリッジス)との再婚を決めた。
ところが彼女の母親は大反対。それでも意に介さず、結婚式等の段取りを進めるケイ。しかも、新たな愛の巣は、何と前夫と一緒に暮らした家。でも、場所も良いし、お気に入りの家だと母親に平然と言い放つケイ。
とはいえ、母親の意見も取り入れ家の内装替えに取りかかると、突然、タップの音が聞こえ、彼女の前にヴィラーノが現れて・・・
再婚目前のヒロインにだけ見える元亭主が巻き起こすコメディ。
前向きというか、何とも身勝手で自分のことを基準にしか考えないヒロイン。
彼女の母親も同じで、何と5回目の再婚をしており、ヒロイン同様に、自分の価値観を優先させ、他人を翻弄するタイプ。
一方、再婚相手は真面目な男。そこに飄々としたというか、お調子者的前夫の幽霊が登場してくる。
本作はブラジル映画「未亡人ドナ・フロール」(1976)のリメイク。オリジナルは未見なので、どの程度の換骨奪胎なのかは計れぬが、やはりデヴィッド・リーンの「陽気な幽霊」(1945)の影響が多大であるのは間違いない。
しかも、「陽気な幽霊」では前妻を呼びだすのに霊媒師が介在したが、今回はいきなりの登場。
そこからして「設定が弱い」と思ったが、そんな観客を意識してか、本作ではコメディ・リリーフとして元聖職者で悪魔祓いが出来るという怪しい男を登場させてくる。
つまり、「陽気な幽霊」の女霊媒師を完全に意識したキャラクター。他にも、前夫を知っているヒロインの親友やら、母親の五度目の再婚相手のオジサンなど、どのように絡んでくるのかと思わせる人物を登場させ、何とかオリジナリティをだそうと砕身しているとは感じる。
しかし、どうにも設定と進行が弱く、コメディにするためのアイディアが先行し、登場人物たちのキャラ設定に矛盾を感じるし、誰に肩入れして良いのか困惑した。
確かに、再婚相手やヒロインの親友など、真面目系キャラがいるが、そもそも何故、あれほど身勝手なヒロインと恋愛関係なり友人関係を維持できるのかが疑問に感じた。
しかも、前夫も傍若無人というか、再婚相手とベッドに入ると、こつ然と足元に立ち、二人を覗いてヒロインに質問までするタイプであり、元の愛の巣に居座り続けていて他には行かないと言うくせに、再婚相手との田舎への婚前旅行には付いて来たりする。
一体、何のためにヒロインの前に降臨してきたのか。
確かに、前夫も、かのヒロインだからこそ相通ずるものがあり、結婚生活を続けられたと思わせるのだが、ラストの前夫の言い訳には閉口した。
落とし所がそこでは、納得する観客がどの程度いるのかとも感じた。尤も、それは日本人だからであり、あちらのショウビズ界では、当然の価値観なのかもしれぬ。
それにしても、抜本的なアイディアは悪くないので、もう少しひねりを効かせ、主要キャストを変えたら、面白いくなっただろうにと感じさせる笑うに笑えぬコメディ。