余談雑談 2017年4月15日

実家のタバコ屋で店番の日々。桜の時期にでも合わせているのか、観光客が店近くで、ガラガラとキャスター付トランクを引き摺る音が聞こえる。

午前中は、チャック・アウトらしく駅方面に向かう家族たちが多い。しかも、決まってアジア系で、欧米系はバックパックだ。午後は、スマホやタブレットで宿を探しながらのガラガラ音。

この前の午前中、店の眼前で、スマホをいじりながら困惑してるアジア系の若い女性二人が立った。自分視点で考えると「営業妨害」。だが、一応、若い女性二人組だ。なので、声を掛けた。

案の定、近くの旅館を探していた。店前の4メートル幅の一方通行と、もう一本向こうに並行して走る道に挟まれた、両方突き当りの路地の中にある旅館は見つけにくい。何せ、昔は連込み旅館である。かつては、ひっそりとした場所にこそ魅力があったに違いない。

何度か聞かれた旅館であり、そこを曲がって、と教えた。覚えたての「アリガト」と笑顔で返された。

近くで何軒か普請中で、全部がホテルになるという。行く行くは、絶滅危惧ビジネスの実家も、商売替えをしたほうが良いかもしれないな。

その午後、ふらりとアジア系の男性観光客がやってきた。またもや、てっきり探しにくい宿泊先の場所を尋ねにきたのかと。

ところが、商品陳列棚を指さし、一番安い「ゴールデンバット」「エコー」「わかば」をひとつずつ欲しい仰る。

かつて『3級品』と呼ばれた商品で、特例法で税率が安かったが、去年から税制改正で大幅に値上がりした。しかも、更にこの四月からも値上。オリンピックまでに一般品と同価格に持って行きたいらしい。

場所柄、路地も多く、昔ながらのアパートも残っており、観光客のみならず、年金受給者や生活保護で生きる老齢者が多く住む地域でもある。なので、そういう商品が売れ筋だった。

ところが、今月からピタリと売り上げが止まった。値上がりを知らなかった人は、買わずに帰る人もいる。心配性の老母は、またもや店仕舞いを口にしているほど。まあ、少量でも売れるのは嬉しいのだが。

その観光客は五千円札をさしだし、こちらは電卓で金額を提示した。

金額を確認すると、今度は一番人気のメビウスを指し、1カートン欲しいと。

自分にとっては青天の霹靂というか、これが噂の「爆買い」かと。小さな裏通りのタバコ屋としては、まさしく大量買い。

それにしても、どこで何を調べてのこれらの商品群なのか。それこそネット情報社会の成せる技か。

確かに、タバコは免税対象であり、かつては、海外旅行の土産の代表格でもあった。だが、空港では数種類しか売ってない。

尤も、これほど喫煙率が下がった日本では、タバコの土産もなかろうが。もしかして、まだまだアジア圏では喫煙率が高いのかな。ならば、外国人観光客のために宣伝を考えるの一手かもしれぬ。

でも、待てよ。「免税しろ」とは言われないか。確かに、半額近いからな。

まあ、そういうのは、出国時の税関か、帰国時の入国税関で話し合ってくれと言うことで逃げる。

それに、国内ではこれほどのデフレで値引き合戦が主流だが、誰からも、「安くしろ」とは言われないだけマシなのも事実。

しばらくは、ひっそりと続けるか。

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