スタッフ
監督:アラン・J・パクラ
製作:アラン・J・パクラ
脚本:アンディ・ルイス、デイヴ・ルイス
撮影:ゴードン・ウィリス
音楽:マイケル・スモール
キャスト
ブリー / ジェーン・フォンダ
クルート / ドナルド・サザーランド
ケーブル / チャールス・シオッフィ
リゴーリン / ロイ・シャイタ゛ー
アーリン / ドロシー・トリスタン
トリーナ / リタ・ガム
トラスク / ネイサン・ジョージ
精神医 / ヴィヴィアン・ネイサン
ゴールドファーブ / モリス・ストラスバーグ
日本公開: 1971年
製作国: アメリカ アラン・J・パクラ・プロ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
今回もジェーン・フォンダとニュー・ヨーク。しかし、ラブコメではなくサスペンスで、彼女がアカデミー主演女優賞を獲った作品。
アメリカ ペンシルヴェニア研究所に勤務する科学者が消息を絶った。警察は、彼がNYのコール・ガールと関係があったとみるが、確証はなかった。
半年が経過し、警察の捜査が遅々として進まないのは、対象が一般人だからと疑念を持った家族と上司は、失踪者の親友で警官のクルート(ドナルド・サザーランド)をNYに派遣した。
生真面目な彼は、先ず直接浮気を疑わせる手紙を受け取ったブリー(ジェーン・フォンダ)に会いに行った。しかし、客は大勢いて、そんな男がいたかどうかは覚えていないと冷たく突き放される。
それでも手掛かりは彼女だけだと感じたクルートは、彼女の部屋の下を借り、盗聴や尾行を開始する・・・
大都会で孤独に生きる娼婦に降りかかる災難を描くサスペンス・ドラマ。
売れない女優。生活のためには、売春をして生計を立てるしかない。
しかも美人で、女優とくれば演技はお手のもの。だが、孤独であり、精神科医にも通っている。
そんな日常を、田舎からやって来た生真面目な男が調査しながら、失踪者の友人の安否や、ヒロインに付きまとうストーカーがいるのではないかというサスペンスが盛り上がっていく内容。
ただし、推理系というよりは、人間の脆弱さがメインに描かれるドラマとして進行していく。
ハッキリとは描かれないが、田舎からでてきた若い美女が夢を叶えられずに売春婦になり、結果、それも「都会に生きるクールな女」と自己暗示をかけて来たようなヒロイン。
そんな彼女に身分を明かして協力を要請する警官を田舎者扱いする。しかし、心が空虚なヒロインは、そんな俄か探偵に惹かれて行くのだが、別れた元ヒモとの再会で、再び心が揺れ動くといった次第で、失踪者探しの過程で絡んでくる人間たちのそれぞれのドラマが描かれる。
ヒロインを演じたフォンダが、クールさの中に不安定さを際立たせる演技でオスカーを採ったのも頷けるし、脇役で、悪役専門というイメージの強かったドナルド・サザーランドを生真面目な相手役で起用するといった妙味も感じた。
そんな出演陣の中では、印象こそ薄いのだが元ヒモ役でロイ・シャイダーが出演しているのも懐かしい。
公開当時、本作とフェイ・ダナウェイが主演した「ルーという女」(1969)で、クールで、これぞ大都会NYの嫌な奴という印象を持った。その後も、「フレンチ・コネクション」(1971)、「重犯罪特捜班/セブン・アップス」(1973)、「マラソンマン」(1976)など、NYを舞台にした作品で見かけることが多かった。
また、これはギャグかと思ったのが、スピルバーグの「JAWS/ジョーズ」(1975)の警察署長役が、サメのでる島に来る前はNYの警官だっというのも、彼らしい。
サスペンス・ドラマというよりも人間ドラマに重点を置いて、じっくりと人間像を浮かび上がらせるアラン・J・パクラの手腕も大したもの。
売春婦という、普通であれば脇役的存在を主役に据え、人間関係の希薄さを浮かび上がらせる内容は、妙な重厚感が漂って捨て難い作品に仕上がっている。