スタッフ
監督:ジョン・カーペンター
製作:デブラ・ヒル、カート・ラッセル
脚本:J・カーペンター、D・ヒル、C・ラッセル
撮影:ゲーリー・B・キッブ
音楽:シャーリー・ウォーカー、J・カーペンター
キャスト
プリスケン / カート・ラッセル
マロイ / ステーシー・キーチ
エディ / スティーヴ・ブシェミ
大統領 / クリフ・ロバートソン
パイプライン / ピーター・フォンダ
タスリマ / ヴァレリア・ゴリーノ
ジョーンズ / ジョージ・コラフェイス
ハーシー / パム・グリア
スキンヘッド / ロバート・キャラダイン
日本公開: 1996年
製作国: アメリカ ライシャー・エンターテイメント作品
配給: UIP
あらすじとコメント
前回扱った「ニューヨークの休日」(1963)で、オイシイ役どころを持って行ったクリフ・ロバートソン。芸域が広い俳優でもあり、大統領だったジョン・F・ケネディに似ていると囃されたこともあり、ならば、大統領役を演じた作品にしてみた。人を喰った近未来SF映画の続編。
アメリカ、ロサンジェルス2000年に巨大地震が発生し、北米大陸棚の一部が崩落。ロサンジェルスが、小さな島となってしまっていた。
2013年、時の大統領(クリフ・ロバートソン)は、憲法を改正。自らを任期終身制へと変更し、クリーンなアメリカを作るべく、犯罪者らを島に完全隔離していた。
そこに史上最悪の犯罪者プリスケン(カート・ラッセル)が送られてきた。当然、流刑地行きであるが大統領は特別任務を命令する。何と、大統領の娘ユートピア(A・J・ランガー)が、島を牛耳るペルー系テロ集団のリーダーの思想に感化され、世界を掌握できる超重要機密装置を盗みだし、島に逃げ込んでしまったのだ。
要は、その娘を連れ戻せという命令で、プリスケンは体内に神経破壊薬を注射され、一定時間内に解毒剤を打たないと死んでしまう状態にされてしまう。
否応がない状況に追い込まれた彼に残された時間は、9時間30分足らずであった・・・
奇想天外な意匠をそのまま継承した近未来SFアクションの続編。
第一作「ニューヨーク1997」(1981)では、マンハッタン島自体が巨大監獄と化した想定で、そこに大統領が拉致され、強制的に救出に行かされる主人公を描いていた。
本作も主人公は同じ。第一作から15年ぶりに制作されたので、年代も15年後の2013年である。
設定や筋運びは、ほぼ変更がない。救出対象が、大統領本人から一人娘へと変わっただけで、強烈なサブキャラや、そこまでアメリカが荒廃しているかと、笑ってしまうほど人を喰った内容は同じ。
悪く言えば、「あの夢をもう一度」だし、それを敢えて笑い飛ばそうという金のかかったジョークとも取れる。
結論から言えば、前作も、本作も嫌いではない。自分の命の時間が設定され、タイム・リミットありきで、強靭なスーパーマンのような悪役的主人公が暴れまくる。
場所がLAということは、マルホランド・ドライブやサンセット大通りという有名な場所が登場してくるし、ハリウッドがあった場所なので、まるでスターたちを揶揄するような整形手術に失敗したお化けのような集団がでてきたりと、抱腹ものである。
しかもラストの大アクションはアナハイム某所。解りやすく言えば、浦安にもある某超有名リゾート。ただし、そのものの名前は使用できないので変更になっているが、見れば、そことすぐ分かる。
「パリへの進出の失敗によって倒産した」という、キツ過ぎるセリフがでてきたり、ちょっとした犯罪でも島流しになる「理想国家」で、送られる前に改心すれば「電気イス」死刑に昇格するやら、主人公が捕まった場所が「タイのアメリカ領」とか、ニヤニヤしてしまった。
しかも、史上最悪の大統領役を、「魚雷艇109」(1963)で、若きケネディ本人役を演じたクリフ・ロバートソンにやらせるなど、カルト映画ファンの魂を見事に突いてくる。
本作では、他にも、ピーター・フォンダの意外な起用法や、カルト俳優的ポジションで好きだったスティーヴ・ブシェミなど、キャスティングの妙も感じる。
とても悪趣味で、人を馬鹿にしたような内容を平然と二作も作ってのけたジョン・カーペンターの心意気に乾杯したくなる、カルト・アクション作。