スタッフ
監督:ジョン・カーペンター
製作:デブラ・ヒル、ラリー・フランコ
脚本:ジョン・カーペンター、ニック・キャッスル
撮影:ディーン・カンディ
音楽:ジョン・カーペンター
キャスト
プリスケン / カート・ラッセル
ホーク / リー・ヴァン・クリーフ
デューク / アイザック・ヘイズ
大統領 / ドナルド・プレゼンス
ブレイン / ハリー・ディーン・スタントン
マギー / エイドリアン・バーボー
キャビー / アーネスト・ボーグナイン
レーミー / トム・アトキンス
書記官 / チャールズ・サイファース
日本公開: 1981年
製作国: アメリカ エンバシ─・ピクチャーズ他 作品
配給: 日本ヘラルド
あらすじとコメント
前回はいきなり続編を扱った。なので、折角だから第一作を取り上げてみる。アイディアや起用俳優が面白い、何ともB級感溢れる作品。
アメリカ、ニュー・ヨーク社会が混沌とした結果、凶悪犯罪が多発したアメリカ。遂に合衆国政府はマンハッタン島そのものを巨大な監獄とし、そこに全米の犯罪者300万人を放り込んだ。
全島に高い壁を設置し、川には電流を流し、常にヘリコプターによる監視体制がとられており、脱獄は完全に不可能であった。
そんな時期、大統領(ドナルド・プレゼンス)を乗せた専用機がハイジャックされる。危機を察したSPたちは、大統領を脱出カプセルに入れ逃がすことにした。しかし、そのカプセルが落下したのが、こともあろうにマンハッタンのど真ん中。島を牛耳るボスのデューク(アイザック・ヘイズ)の手に落ちた大統領を人質に、彼は全囚人の解放を政府に要求。
困った政府は、最悪の犯罪者プリスケン(カート・ラッセル)に、解放と引き換えに大統領救出を命令するが・・・
アイディア勝利の何とも人を喰ったSF的アクション作。
犯罪者の手に落ちた大統領。救出を命令されるのが、誰も手を付けられない犯罪の帝王と呼ばれる男。
当然、政府側は信用できないので、24時間で爆発するニトログリセリンを首に埋め込ませる。
つまり、タイムリミットがある救出劇。小型潜水艦でマンハッタン島に上陸するが、そこにいるのは全員が犯罪者。それも、かなり個性的な面々。
まるで漫画の世界観を再現しているのである。しかも、割と真面目に作っているから何とも奇妙な印象を受ける。ただしクダラナイと感じれば、それでおしまいの作品ではある。
サブキャラたちも、ミュージシャンのアイザック・ヘイズやら、アカデミー主演男優賞を獲りながら作品を選ばないクセモノ、アーネスト・ボーグナイン。アメリカ映画より、イタリア西部劇の印象が勝るリー・ヴァン・クリーフなど。
そもそも何故、大統領役に彼を起用なのというドナルド・プレゼンスなど、どうにも変な映画ファン魂を刺激されニヤニヤしてしまった。
制作されたのが混沌としてた1981年であり、当時としては15年後の設定だが、今だと、とっくに過ぎてしまった年代。
なので、現在見るとコメディとも受け取れるのも確か。『近未来モノ』というジャンルは、多く作られてきたが、悪趣味というか、悪ふざけ的C級作品が目立つ。
コンピューターやら監視システムなど現在の日進月歩ぶりが想像出来ないのもある意味、作り手たちの限界なのかもしれぬが。
それでも、悪のヒーローという主人公で、当然、彼も周囲も汚い手を使っての攻防戦を繰り広げたり、自由の女神像が監視塔にして司令部とか、廃墟と化したニュー・ヨークがチープ過ぎたりと、何ともワザと人を喰ったような設定と作劇。
かといってB級映画の雄ロジャー・コーマンとも違う作風。自由過ぎる設定と力づくの展開。監督自身が意識してるとしか思えないカルト映画。
ハナから知的な観客を意識していない、開き直った内容。当然、演じる役者たちも、皆、楽しそうである。
わざとB級映画ファンというか、オタクをターゲットにした作品であり、巨匠とか名匠といった肩書を嫌うカーペンタらしさ全開の、真面目に不真面目を通した異質な作品。