続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 – IL BUONO, IL BRUTTO, IL CATTIVO(1966年)

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スタッフ
監督:セルジオ・レオーネ
製作:アルベルト・グリマルディ
脚本:L・ヴィンチェンツォーニ、F・スカルベッリ、S・レオーネ
撮影:トニーノ・デッリ・コーリ
音楽:エンニオ・モリコーネ

キャスト
ブロンディ / クリント・イーストウッド
セサンテ / リー・ヴァン・クリーフ
パシフィコ / イーライ・ウォラック
ウォレス / マリオ・ブレガ
北軍大尉 / アルド・ジェフレ
ラミレス神父 / ルイジ・ピステッリ
カーソン / アントニオ・カサール
賞金稼ぎ / アル・ミューロック
スティーヴンス / アントニオ・カサス

日本公開: 1967年
製作国: イタリア PEA作品
配給: ユナイト


あらすじとコメント

前回の「ニューヨーク1997」(1981)で、イヤリングなどして嬉々として体制側の看守司令官を演じたリー・ヴァン・クリーフ。クリント・イーストウッド同様、アメリカでは芽がでずにイタリア製西部劇で名が売れた俳優。とくれば、やはり、これだろう。アメリカ系俳優を起用しながら、本国では絶対に作らないであろう異色ウェスタン。

アメリカ、ニュー・メキシコ南北戦争下、賞金2000ドルの御尋ね者パシフィコ(イーライ・ウォラック)を捕えたブロンディ(クリント・イーストウッド)が、彼を連れ賞金を受け取りに町にやって来た。

即座に縛り首になるパシフィコだが、吊られる寸前、首にかかったロープをライフルで切り逃亡を助けるブロンディ。何と二人は、賞金を半分に分けては逃げるを繰り返すコンビだったのだ。

一方、金を貰い、殺しを請け負ったセサンテ(リー・ヴァン・クリーフ)は、相手を見つけだし、仕留める寸前、そいつの仲間が20万ドルの金貨を隠したことを知った。

当然、そのかつての仲間を探す旅にでるが・・・

金に目がくらんだ奴らが繰り広げるイタリア製西部劇。

アメリカ製のウエスタンとは全く違うティストで一世を風靡したイタリア製の「マカロニ・ウエスタン」。

日本に於ける認知は黒澤明の「用心棒」(1961)を完全にパクった「荒野の用心棒」(1964)で、監督と音楽、主演が本作と同じ。

当時、亜流の二流作品群と位置付けされていた。事実、あまりにもふざけ過ぎた作品も多く公開され、正統派ウエスタンで育った諸先輩たちには忌み嫌われた。

そもそもイタリア資本でスペイン・ロケ、出演陣も、それまでのB級アメリカ製とも違う顔付きのヨーロッパ系ばかり。

初期の頃は海外公開を意識してか、本作のセルジオ・レオーネ監督は「フィル・カールソン」と名乗った。また、マカロニの若きヒーローだったジュリアーノ・ジェンマも「モンゴメリー・ウッド」として売りだした。

ただし、アメリカの西部劇が衰退していた一方で、イタリア製は全盛を迎えたから皮肉なものである。

粗製乱造だったイタリア製西部劇の中でも、本作は、良く出来ている方だと感じる。

先ず、第一は主役三人が売れないながらもアメリカ映画出身だから。しかも、マカロニで売れたイーストウッドやリー・ヴァン・クリーフよりも、イーライ・ウォラックが完全に二人を喰っているのも興味深い。

彼の小汚く、強いガンマンでもあるのに頭が弱いという設定が、二枚目を気取る他の二人よりも目立つし、特にイーストウッドとの絶妙な会話のテンポもかなり貢献している。

そしてイタリア製としては南北軍入り乱れてのクライマックスにかなり金を掛けている点もあげられるだろう。

ただし、演出は大雑把。スケール感はあるものの誰一人軍人らしくない有象無象の輩ばかりなので「ヤクザの出入り」に見える。

それでも、統率徹底されたプロ軍隊でない民兵の集団だと思えば、ある意味、リアルではある。

そう考えると冒頭からの全登場人物の汗臭さや汚れた身なりを見れば、統一されたリアリズムでもある。ゆえに「イタリアン・ネオリアリズム」作劇の流れを強く感じる。

だからこそ、マカロニ・ウエスタンでは残虐でエロテックさが強調されるのも、多くが移民であり、荒くれ者が国を作ったというリアルさの延長線だと認知できようか。

そしてヨーロッパ製だからこそ、それらしい俳優がいないからか、アメリカでは単純な悪役として描かれることが多かった先住民が、ほぼ登場しない。

また勧善懲悪なヒーローが活躍しなく、誰もが悪というか、影の部分を持つ人間ばかりというのも特徴か。

そういったことを踏まえた上で本作を鑑賞すると、当時の流れ者の生きるための日常が浮かび上がるかもしれない。

ただし、そこに流れるのは人間としての本能の強さと精神的未成熟ゆえの弱さであるのだが。

それらの観点から、やはり本作は異色西部劇の佳作という評価になろうか。

余談雑談 2017年5月13日
地元にある立ち飲みワイン屋。新規開拓もせず、お気に入りが続々と閉店した中、最近はここばかり。 二坪程度の店で、小さな厨房と受け渡しのカウンターがあるだけ。客は路上で飲むスタイルだ。要は、キッチン・カー的な商売形態。 一杯幾らで、キャッシュ・