スタッフ
監督:セルジオ・レオーネ
製作:フルヴィオ・モルセーラ
脚本:セルジオ・レオーネ、セルジオ・ドナーティ
撮影:トニーノ・デッリ・コーリ
音楽:エンニオ・モリコーネ
キャスト
フランク / ヘンリー・フォンダ
ジル / クラウディア・カルディナーレ
ハーモニカ / チャールス・ブロンソン
シャイアン / ジェーソン・ロバーズ
モートン / ガブリエル・フェルゼッティ
スネイキー / ジャック・イーラム
ストーニー / ウディ・ストロード
サム / パオロ・ストッパ
保安官 / キーナン・ウィン
日本公開: 1969年
製作国: イタリア、アメリカ ラフラン、他作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
イタリア製西部劇の監督セルジオ・レオーネ。世界で認知度が上がり、遂にアメリカ・ロケで完成させた大作。それでも、彼らしい矜持を感じる叙事詩的西部劇。
アメリカ、アリゾナ町もなく、荒野にポツンと建つ寂びれた駅で三人のガンマンが汽車を待っていた。到着した汽車から降りたのはたった一人。
その男ハーモニカ(チャールス・ブロンソン)は、自分を待っているはずと思っていた男たちの雰囲気に異様なものを感じ取った。不意に彼に襲いかかる三人。しかし、ハーモニカの動きは敏捷で、即座に三人を葬った。
その頃、荒野の一軒家でフランク(ヘンリー・フォンダ)率いる一団が、平和に暮らす父親と子供四人を血祭りに上げる惨劇が起きた。直後、殺害された父親の再婚相手ジル(クラウディア・カルディナーレ)がニュー・オリンズからやって来たが、いきなり喪主となってしまった。
それでも、彼女はひとりでこの地に居座ると決心したが・・・
廃れゆく西部劇というジャンルにイタリア人監督ならではの心意気を感じさせる佳作。
何をしに来たのか皆目解らぬ謎の男。いきなり未亡人となった元売春婦。そして子供をも平然と殺害する悪党。更に、何故か濡れ衣を着せられる男。
メインはこの四人。複雑な人間関係と謎めいた展開。王道のアメリカ製西部劇を踏襲しつつ、マカロニ・ウエスタンのティストを醸す構成。
それまでスペインでロケし、イタリアやスペインのキャスト、スタッフで制作され、邪道と蔑まされてきたイタリア西部劇の代表格であったセルジオ・レオーネ。
そんな彼が、本場アメリカでロケし、斜陽であった西部劇に、イタリア人ならではの感覚と感性で万感の思いを込めて制作した作品である。
亜流として出発し、アメリカでもテレビに押され斜陽産業だった映画界。起死回生ではなく、決別として制作されとしか思えない大作だ。
確かに、アメリカでもサム・ペキンパーなどの挽歌的西部劇も数多く輩出された時期であり、レオーネ監督自身も西部劇から別ジャンルへと方向転換しようとしていた時期。
「アメリカン・ニュー・シネマ」も台頭しどこかで、諦めムードが漂っていた。そこに来ての正統的ながらも、この異質西部劇。
当時、何とも複雑な心境に陥った。それまでマカロニ・ウエスタンは人間ドラマを排除し、アクションをメインに残酷とエロで売っていた。
それに対してのレオーネが放った本作は、正統派人間ドラマに重点が置かれている。
興味深いのはアメリカ資本でありながら、原案に後に「1900年」(1976)や「ラスト・エンペラー」(1987)を撮るベルナルド・ベルトルッチや、「サスペリア」(1977)、「ゾンビ」(1978)等のホラー映画で有名になるダリオ・アルジェントが参加している点も忘れてはなるまい。
しかも、脇役こそマカロニ・ウエスタンの常連が顔をのぞかせているが、ヘンリー・フォンダを堂々の悪役で主役に起用し、苦労人チャールス・ブロンソン、名脇役のジェーソン・ロバーツというアメリカ製西部劇の王道俳優を起用している点も注目である。
そして何よりもアメリカ製B級西部劇のヴェテラン脇役、ジャック・イーラムやウッディ・ストロードといったファンには堪らない役者を冒頭のチョイ役で配置するなど、アメリカ製西部劇への決別を決定付けている。
それでいて、ちゃんとレオーネが撮り続けたマカロニ西部劇としての開き直りも醸しだしている。
ただし、レオーネ作品は長尺の作品も多く、本作も三時間近い大作である。
それまでの王道とも違うし、ニュー・シネマ的ドラマ主導でもない、リアリズムと男たちの照れ隠し的ダンディズムが融合したレオーネらしい佳作である。