スタッフ
監督:メルヴィル・シェイヴルソン
製作:ロバート・F・ブラモフ
脚本:M・シェイヴルソン、モート・ラックマン
撮影:チャールス・F・ホイーラー
音楽:フレッド・カーリン
キャスト
ヘレン / ルシル・ボール
ベアズレー / ヘンリー・フォンダ
ハリソン / ヴァン・ジョンソン
マドレーヌ / ルイーズ・トロイ
家族医 / トム・ボスレー
アシュフォード博士 / シドニー・ミラー
ナンシー / ナンシー・ハワード
マイク / ティム・マシスン
ラスティー / ギル・ロジャース
日本公開: 1969年
製作国: アメリカ R・F・ブラモフ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
前回の「ウエスタン」(1968)で、悪役ながら堂々の主役を張った名優ヘンリー・フォンダ。そんな彼が同じ年に出演した、正反対の映画をチョイスした。再婚によって大家族になった男女を描くホーム・コメディ。
アメリカ、カリフォルニア海軍の航空母艦勤務のディアズレー(ヘンリー・フォンダ)は、子供10人を持つ父親でもあったが、妻に先立たれたヤモメ男。彼は地上勤務を命じられ、子供らとゆっくり過ごせると思っていたが、子供たちは自分らを放っておいたと余所余所しい態度で彼を困惑させた。
看護師のヘレン(ルシル・ボール)は8人の子供を持つシングル・マザーで、海軍基地近くの病院に勤務していた。双方とも、幼子から反抗期までの子育てに翻弄しつつの生活であった。
そんなある日、ディアズレーの娘の一人が体調が悪いからと病院へ行った。男ヤモメの彼は原因が何であるかに気付かず、偶然担当したヘレンから、亡き母親への未練であると告げられた。
しかし、その一方で、二人は急速に惹かれるものを感じて・・・
子沢山同士の再婚を描くドタバタ的ホーム・コメディ。
伴侶を亡くした寂しい者同士が知り合う。双方ともそれだけの子供がいれば、当然、異性に対しての愛情深さというか、欲望が強いのは当たり前だろう。
ところが双方とも、それだけの子供がいるとは隠しておきたいから、気持ちを素直に表せずの駆け引きと相成る進行。
やがて再婚するが、それから当然の如くドタバタが繰り広げられる。
思春期から反抗期までの子供が総勢18人となれば、双方の亡き片親の思い出を引き摺ったり、再婚相手を親とは認めたくないという態度にでるのである。
ただし、それも予定調和であり、ラストは『ひとつの家族』になるだろうなと誰も感じるはずである。
コメディであるから当然であるのだが、別な視点から見ると、移民の国であり、各々の個性を認めつつの相互理解として成長した国アメリカ。
そんなアメリカが、紆余曲折しながらも一つの強い国家として成立していこうという愛国精神への煽動とも受け取れる。
制作されたのはヴェトナム戦争の最中である。そもそも主人公は海軍軍人であり、規律を持って子供らを統一させようとする強いリーダー・シップを持った『男』で、ヒロインは看護師という赤子を取り上げたり命を救う『母』というポジション。
しかも最年長の長男は徴兵を受け、海軍でなく、海兵隊へ入隊する。戦争が泥沼化していく時期でもあるが、ひとつになった家族から、その家族を守るために志願していくという、ある種、怖い側面をコメディとして描くことによって、アメリカという国の正当性を誇示させようとしたとも感じる。
何も考えなければ、冗漫なコメディでもあり、主役二人と子供たちの演技でバランスを保とうとしている苦心作とも受け取れる。
ただし、緩衝材として、ことあるごとに登場する医師が途中棄権をあきらめさせるキャラクターとして秀逸。
コメディとして見るか、深謀遠慮な価値観の煽動と感じるかで異なる印象を受けるだろうか。ただし、どちらにせよ鼻に付くので、素直に喜べない作品だとも感じる。