スタッフ
監督:ウォルター・ラング
製作:ラマー・トロッティ
脚本:ラマー・トロッティ
撮影:レオン・シャムロイ
音楽:ライオネル・ニューマン
キャスト
ギルブレス / クリフトン・ウエッブ
リリアン / マーナ・ロイ
アン / ジーン・クレイン
デボラ / ベティ・リン
バートン / エドガー・ブキャナン
メベイン婦人 / ミルドレッド・ナトウィック
アーティスティン / バーバラ・ベイツ
リリー / キャロル・ニュージェント
ウィリアム / ジミー・ハント
日本公開: 1951年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: セントラル
あらすじとコメント
前回の「合併結婚」(1968)は、多くの子を持つバツイチ同士が再婚し大家族になるコメディ。今回は、単一夫婦による子沢山で、いかにも往年のアメリカ製らしいウェルメイド・コメディを選んだ。
アメリカ、ロードアイランド1921年のこと。何でも合理化しようと日々、粉骨砕身する能率技師ギルブレス(クリフトン・ウェッブ)は、愛妻のリリアン(マーナ・ロイ)との間に高校2年の長女アン(ジーン・クレイン)を筆頭に11人の子宝に恵まれる家族の長だ。
そんな彼は職場に便利だからと、勝手にニュージャージー州への引っ越しを決めてしまう。突然の発言に、野球に没頭する息子らに反対されるが、絶対的君主であり、子供相手に完全論破するので、否応がなしであった。
結果、一家は転居と相成った。新しい邸宅は広くなったが、使用人2人では対応が出来ないことが判明。すると、ギルプレスは、全員参加の家族会議を催し、善後策を検討して、これぞ民主主義と子供らに教えた。
そんな日々の中、リリアンが12人目を懐妊したことが判明して・・・
日本人が憧れた、これぞアメリカ製ホーム・コメディ・ドラマの典型作。
時代性もあろうが、超ワガママで独善的な家長。それでいて、常に家族思いで、独自の教育方針で、同年代の他の子供たちよりも先を行かせている。
しかし、古風でもあり、「女性はこうあるべき」、「男子はこうあるべし」という自分の絶対的価値観を押し付ける。子供たちもあきれながらも従っていくから微笑ましい。
流石に、家長が行き過ぎたときは、それとなく窘めるのは妻だ。
しかも、これが実話だから興味深い。時代性と言えばそれまで。それでも、これぞ、アメリカのホーム・コメディと羨ましがった日本人が多いのも事実だろう。
日本公開は昭和26年で、まだまだ敗戦の残影が色濃く残っていた時代に、これほどハッピーな家族ドラマを見せられては、何から何まで自分らと違う生活様式に夢を重ねたのであろう。
しかも子供が12人である。それでいて幸せであり、思春期に差し掛かり異性に興味を持った長女が、遂に反乱を起こすのだが、そういったエピソードさえが微笑ましい。
結果、偉いのは女性であり、唯我独尊を気取っても、所詮、男は可愛い生き物と教えてくれもする。
ドタバタ・アクションによる派手なギャグはないが、細かいながらも、思わずニヤリとかクスクス笑いを生じさせる進行で、安心して観て行ける。
ただし、実話なので予想外の結末を迎えるのだが、それも「健全なるアメリカ」を謳い上げる内容で、事実、本作の好評により続編も制作された。
何とも微笑ましい、この手のウエルメイドなコメディが減っているのも時代性。
また12人を単独で産み育てる家庭も激減した。否や、先進国では少子化が進み、生涯独身で通す人間も増加中。
それもまた時代性なのだろう。「産めよ増やせよ」というのが死語というか、下手をすると差別的表現と指摘されかねない時代。
まさに、本作の主人公のように「個人の意見」が優先され、独自の価値観を通すのも正論であり権利。
それでも、本作の主人公は、心優しき人間で、結局は子供らの当時の流行といった意見を受け入れていくのだ。
それも時代か。幸せさが妙に胸につかえるホーム・ドラマの佳作。