我等の生涯の最良の年 – THE BEST YEARS OF OUR LIVES(1946年)

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スタッフ
監督:ウィリアム・ワイラー
製作:サミュエル・ゴールドウィン
脚本:ロバート・E・シャーウッド
撮影:グレッグ・トーランド
音楽:ヒューゴ・フリードホッファー

キャスト
ミリー / マーナ・ロイ
スティーブンソン / フレドリック・マーチ
デリー / ダナ・アンドリュース
ペギー / テレサ・ライト
パリッシュ / ハロルド・ラッセル
ウィルマ / キャシー・オドネル
エングル / ホーキ゛ー・カーマイケル
マリー / ヴァージニア・メイヨ
クリフ / ステゥーヴ・コクラン

日本公開: 1948年
製作国: アメリカ S・ゴールドウィン作品
配給: セントラル


あらすじとコメント

良妻賢母役が似合う女優マーナ・ロイ。今回も彼女らしい役どころを演じた作品にした。戦後のアメリカ小市民らの実情を描いたアカデミー賞9部門受賞の有名作。

アメリカ、オハイオ第二次大戦が終わり、出征していた軍人たちが次々と復員してきた。

元ソーダ水売りという立場ながら、数々の武勲を立てた空軍大尉デリー(ダナ・アンドリュース)、元銀行役員の陸軍軍曹スティーブンソン(フレデリック・マーチ)、両手を失い義手生活を余儀なくされている海軍伍長パリッシュ(ハロルド・ラッセル)らは、同じ町の出身ゆえ同じ輸送機で帰郷した。それぞれ数年に渡り故郷を離れていたので複雑な心境でもあった。

スティーブンソンは、家族らが待つ高級マンションに戻り、妻ミリー(マーナ・ロイ)や、娘ペギー(テレサ・ライト)らに暖かく迎えられた。デリーは実家に戻るものの、両親から妻は生活苦からナイト・クラブで働いていると聞き複雑な心境になる。

そしてパリッシュは、何よりも自分の変わり果てた姿に好奇の目と動揺が待っているだろうと家に戻った。そんな彼には、隣家に住む恋人がいたが・・・

帰還した三人の小市民たちが歩む人生の厳しさと寛容を描く秀作。

戦場で非情な体験をしてきた三人の男。ところが故郷は平和そのもので、その落差に動揺を隠しきれない。それでも各々の家族は銃後の生活も穏やかではなかったと語る。

その微妙な温度差を印象付ける冒頭から、三人それぞれが新たな人生を歩み始めようとするが、次々と艱難辛苦が待ち受けるという展開。

この設定は当時のアメリカ映画としては非常に珍しいとも感じる。戦勝国ながら、個人の価値観が優先されるので当然ではあろうが、決して明るくない展望ばかりが描かれるのだ。

他の登場人物も、金銭がすべてで楽しい生活しかしたくないと願う女性や、偏った愛国心から義手の人間に同情を浮かべながら信じ難い言動をする男、口下手ゆえ気の利いたことを言えない両親など、緩急が付いた人物が登場してくる。

やはり、主人公三人の立場がそれぞれ印象的であり、彼らが何度も集う酒場での、それぞれのシークエンスも興味深い。

様々な登場者の個性を際立たせつつ、人間の心情の機微をしっかりと描きだし、3時間近い長尺を飽きさせることなく捌くワイラー演出には絶句する。

中でも、同一画面内で三人それぞれが個人的な諸問題で複雑な心境にいながら、画面は三人の立ち位置を微妙に離し、別な行動をするシーンにおける、奥行きを感じさせつつ、各々が別な表情を浮かべる場面など、鳥肌ものである。

しかもすべてにピントが合う「パンフォーカス」撮影ではなく、固定カメラで微妙にピントを合わせる人物を変えるというのもワイラーが只者ではないと感じさせる。

出演陣では本当に義手の元兵士で職業俳優でないハロルド・ラッセルが、その印象的な肢体ゆえの存在感が半端ない。

脚本も彼自身の人生を投影されたものに書き換えているので、彼だけ異質さが浮かび上がる。

それでも他のプロ俳優たちとの調和を考えた挙句の作劇なので、非常に複雑な心境に陥る。

戦勝国であろうと戦争自体に正当性はないと訴えてくる。

割り切ることと許容していくという小市民たちの存在の重要性こそが国を支えるという反戦映画として立派に機能している秀作。

余談雑談 2017年6月17日
知らないことは、まだまだあるもんだなと思った。 実家近くに随分と前からあるブラジル料理屋がそれ。フレンチやイタリアンよりもずっと数少ない国の料理屋だ。 有名なのは、フェンシングのサーブルのようなものに、様々な肉を刺して焼いたものを串のままカ