アメリカン・グラフィティ – AMERICAN GRAFFITI(1973年)

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スタッフ
監督:ジョージ・ルーカス
製作:フランシス・フォード・コッポラ
脚本:G・ルーカス、G・カッツ、W・ハイク
撮影:ロン・イヴスレイジ、ジョン・ダルクィン
編集:ヴァーナ・フィールズ

キャスト
ヘンダーソン / リチャード・ドレイファス
ボランダー / ロン・ハワード
ミルナー / ポール・ル・マット
フィールズ / チャーリー・マーティン・スミス
ローリー / シンディ・ウィリアムス
デビー / キャンディ・クラーク
キャロル / マッケンジー・フィリップス
ファルファ / ハリソン・フォード
DJ / ウルフマン・ジャック

日本公開: 1974年
製作国: アメリカ ルーカス・フィルム 作品
配給: CIC


あらすじとコメント

フランシス・フォード・コッポラが「ゴッドファーザー」二作の間に、制作にだけ参加した作品を選んだ。60年代の古き良きアメリカの片田舎で生きる若者たちの旅立ちを描いた秀作。

アメリカ、北カリフォルニア1962年8月のある晩。地元高校を卒業したばかりのヘンダーソン(リチャード・ドレイファス)とボランダー(ロン・ハワード)。二人は9月から東部の大学への進学が決まり、翌朝出発であった。つまり、二人には地元最後の晩。

だが、ヘンダーソンは進学への不安やためらいがあり、本当に地元を離れて良いのかと悶々としていた。一方のボランダーは、ヘンダーソンの妹ローリー(シンディ・ウィリアムス)と恋人であったが、離れ離れになることでもあり、その間は、お互いに自由に恋愛しようと告げ、顰蹙を買ってしまう。

それでも、それがベターだと信じるボランダーは意に介さず、自分の愛車を後輩のフィールズ(チャーリー・マーティン・スミス)に預け、居ない間は好きに乗れと。有頂天になったフィールズは、早速、その車でナンパに出向いた。

そんな彼を見つけた彼らの先輩格で、かつて大学進学をあきらめたビッグ・ジョン(ポール・ル・マット)が声をかけて来た・・・

思春期の複雑な心境を持つ若者らの一晩の体験を描く秀作。

小さな田舎町が全世界である若者。奨学金まで貰い将来を嘱望された者や、夢をあきらめストック・カーの猛者として地元に根付いた先輩格の青年。

異性への興味しかないが、経験不足のため七転八倒する後輩。純情な娘やら、背伸びしたい少女など、それぞれがある意味で、青春を謳歌している。

しかし、彼らにとっては、大人から見れば些細なことが大問題でもあり、悩み苦しんでいる。

そんなありがちな一晩を、見事なまでに瑞々しく描いた青春映画である。

朝鮮戦争が終わり、ヴェトナム戦争に突入する前の平和な時期。地方の若者たちは「車」と「異性」が世界の総てだった。

それらを象徴する車や音楽、そしてカルチャー。すべてが渾然一体となって、実にスムースに進行していく愉悦。

中高年以上であれば、聞き覚えのある音楽のオンパレードであり、ピカピカに磨き上げられた50年代後半からの名車の数々が登場し、心をくすぐられる。

大人たちも地味だが、寛容というか、良き時代のアメリカ中流の方々。そんな中で、異彩を放つのが、海賊放送をしているDJ。

演じるのはウルフマン・ジャックで、実際に絶大な人気を誇ったパーソナリティー。日本でも彼の信奉者は多く、TV吹替えでも、何とサザン・オールスターズの桑田圭祐がアテたり、別バージョンでは「ベストヒットUSA」の小林克也が担当した。

特に、桑田圭祐がアテたものは、他にも湯原昌幸、あべ静江といった、苦笑を禁じ得ないアテレコ陣だが、それはそれで興味深かった。

当時、長編第二作目の新人ジョージ・ルーカスの才気が躍り漲っていて、今観ても新鮮さを失っていない。ただし、それは、ある一定以上の年齢の人間だからかもしれないが。

『等身大』の若者が『古き良き時代』の中で成長する、たった一晩の話。その時の経験が、彼らの将来にどのような影響を与えたかを端的に表すラストのクレジットも見事。

何てことない一晩をこれほど見事に描いた青春映画は類を見ないと感じる秀作。

余談雑談 2017年8月19日
相変わらず夏らしからぬ東京。そんな中、つい先立て、所用で文京区の外れに出向いてきた。 周囲は文教地区で、私立や国立の学校が多いのだが、流石に夏休み中で、実にのどか。 地元の常に混雑する観光地とは別世界で、蒸し暑かったが、これが東京かと感じた