ボギー! 俺も男だ – PLAY IT AGAIN, SAM(1972年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:ハーバート・ロス
製作:アーサー・P・ジェイコブス、C・H・ジョフィ
脚本:ウディ・アレン
撮影:オーウェン・ロイズマン
音楽:ビリー・ゴールデンバーグ

キャスト
フェリックス / ウディ・アレン
リンダ / ダイアン・キートン
クリスティー / トニー・ロバーツ
ボガート / ジェリー・レイシー
ナンシー / スーザン・アンスパッチ
シャロン / ジェニファー・ソルト
ジェニファー / ヴィーヴァ
博物館の女性 / スザンヌ・ゼノア
夢の中のシャロン / マリ・フレッチャー

日本公開: 1973年
製作国: アメリカ A・P・ジェイコブス・プロ作品
配給: CIC


あらすじとコメント

今回も夢想家の男が主人公。映画ファンには身に詰まされる、ほろ苦いコメディの佳作。

アメリカ、サン・フランシスコ映画評論家のフェリックス(ウディ・アレン)は、2年間の結婚生活にピリオドを打った。

原因はアクティヴな元妻に、映画のことばかり小難しく言う人生の傍観者だと、愛想を尽かされてのことだった。確かに神経質でアスピリン命でとても女々しい男でもある。時折、彼が憧れるハード・ボイルド俳優ハンフリー・ボガート(ジェリー・レイシー)が現れては、叱咤してくれるが、所詮、それも彼の夢想である。

そんな彼の離婚を知った親友クリスティー(トニー・ロバーツ)と妻リンダ(ダイアン・キートン)が飛んできた。

失意に打ちのめされているフェリックスを何とか慰めようと、女性を紹介すると言いだして・・・

恋愛に憧れる映画狂が繰り広げるドタバタの日常を描く好編。

能動的な妻に三行半を突きつけられ、失意のどん底にいる29歳の映画評論家。

頭髪も薄くなりつつ、背も小さく、さえないメガネまでしている、いかにもモテない男代表である。

そのくせ、女性大好き。だが、ほぼ恋愛成就経験はなく、元妻だって、相手の一時的な熱情ゆえの結婚だった。

そんな主人公が親友夫婦に次々と女性を紹介してもらうが、当然、自爆行動しか取れないコメディ進行。

何よりも面白いのはボガートのそっくりさんが、驚くほど、いかにもボギーが言いそうな台詞を主人公に伝授して行くことだろう。

だが、主人公だって、アンタだから決まるのさ、とヤケ気味に返すから思わず笑ってしまった。

しかもボギー映画から、映画ファンならニヤニヤする有名映画のパロディが何本も登場してくるので、こちらの心を痛いほど突いてくる。

原題は「カサブランカ」(1942)で、ボガートが相棒の黒人ピアノ弾きに言った台詞とか。だが、実は、ボギーはそんな台詞は言ってないから面白い。

兎に角、古今東西、モテたいが、モテない男のコメディは数多くあったが、『映画ファン』を主人公に据えたのには驚いた。

最近は完全に定着した言葉「オタク」も、実は「映画ファン」のことを揶揄したのが初めらしい。尤も、諸説ありで、映画ファンの自分としては違っていて欲しいのだが。

つまり、女性からは忌み嫌われる、どっぷりと何かに特化した趣味漬けになった男たちことを指す言葉である。

公開時に本作を見た時は、自分の姿を連想させ、絶望的な心情に放り込まれた。まさしく、この男は自分だ、と。そう感じた映画ファンは多くいたに違いない。

しかも演じるのがウディ・アレンである。

日本では認知度の低い、脇役コメディアンに過ぎなかったが、以後の彼の活躍を見ると、本作こそ彼の出世作と呼べるだろう。

ただし、興味深いのは監督がアレンではなく、ハーバート・ロスという点。

実に器用な監督で、監督をこなすアレンが、彼にどれほど影響を受けているかが窺い知れよう。

しかも、相手役のダイアン・キートンとは実生活でも恋仲になり、以後二人での共演作が作られて行くのだから、ウディ・アレンを語る上では、絶対に外せない作品でもある。

コメディが得意なアレンだが、本作でも、彼の実に神経質で気難しがり屋の一面も感じさせ、いかにも彼以外では成立し得なかったであろうコメディの佳作。

余談雑談 2018年1月6日
年が明けた。東京は天気に恵まれたが、北風が強く吹いたり、朝晩の冷え込みもあって、身体には堪えた正月。それでも、豪雪だった地域の方々に比べればマシだったろうが。 毎年、実家の自販機の補充に行く以外は、自室での引き籠り生活も例年通り。 特に、正