スタッフ
監督:メル・ブルックス
製作:マイケル・ハーツバーグ
脚本:R・クラーク、バリー・レヴィンソン、M・ブルックス 他
撮影:ポール・ローマン
音楽:ジョン・モリス
キャスト
ファン / メル・ブルクス
エッグス / マーティ・フェルドマン
ベル / ドム・デルイーズ
ヴィルマ / バーナデッド・ピータース
撮影所長 / シド・シーザー
デボア / ロン・ケリー
エンガルフ / ハロルド・グールド
新聞売り / リアム・ダン
妊婦 / キャロル・アーサー
日本公開: 1977年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
前回は映画黎明期のドタバタを再現した作品だった。今回は、敢えて現代に無声映画を作ろうとするコメディ。メル・ブルックスらしい、チョット下品で、いかにもアメリカ的なギャグ満載の映画。
アメリカ、ロサンジェルスアル中からやっと立ち直った映画監督ファン(メル・ブルックス)は、仲間のエッグス(マーティ・フェルドマン)、ベル(ドム・デルイーズ)と共に、倒産寸前の映画スタジオを訪れた。
経営不振のため頭を抱える所長(シド・シーザー)相手に、新作の企画を提示するためである。喜ぶ所長であったが、何と、提示されたのはサイレント映画。強欲企業からの乗っ取り計画まで進行中なのに、そんなバカげた企画などいらんと怒られた。だが、めげないファンは大スターを起用したら大ヒットすると言い返した。成程、その手があるか。結果、所長は企画にゴーサイン。
ならば、早速大スターに直接交渉しようと三人揃って勢い勇んで飛びだしたが・・・
映画製作しようと奮闘する人間たちを小ネタ満載で描くコメディ。
冒頭から、サイレント映画の態で開幕し、音楽と擬音だけで進行する。
しかし、設定は現代であり、文化風俗がリアルで、完全カラー作品でもあるという違和感を敢えて感じさせながらの進行。
しかも映画に出演依頼しようとするのが、バート・レイノルズ、ジェームス・カーン、ライザ・ミネリ、アン・バクロフト、マルセル・マルソー、ポール・ニューマンという凄い面々。
しかも、全員が本人役で登場し、日頃、コメディなど披露しない俳優たちが、喜々として大袈裟にコメディ演技を繰り広げるという愉悦。
初見当時はかなり驚いた。何せ、アメリカ一番のセクシー男優と言われたレイノルズは、全裸でシャワーを浴びているときに、まるでホモセクシャルを感じさせる演出をしたり、アクション俳優として名を馳せていたカーンは、ボクサー姿で肉体美を強調し、プライベートでレース好きなニューマンには特殊状況でのカー・チェイスを繰り広げさせる。
しかし、何といっても白眉は「卒業」(1967)で名演技を見せたアン・バンクロフトとパントマイムの達人でフランスのマルセル・マルソーの登場場面。
確かに、バンクロフトは監督と主演を兼ねたブルックスの妻なので、亭主のために一肌脱いだ感もあるが、フランスのマルソーは、かなり異質である。
間違いなく「パントマイム」は、一切言葉を使わず、肉体表現だけですべてを語るという芸術である。
故に、サイレント映画には持って来いの部類。
それなのに、敢えて、こういう演出をするかと、思わず笑ってしまった。
そのマルソーであるが、かつて来日した折、日本側が「無言表現」というジャンルで、お座敷遊びに登場する「幇間」、別名『太鼓持ち』という狭い空間内ですべてを表現し、笑いを取る名人桜川ぴん助を呼んで見せたところ、いたく感動し、席に招き、是非一杯奢らせてくれと言った逸話も残っている。
真の芸術家は、国が違えど、理解するんだなと嬉しくなった。
本作も、そういった認識を持ったブルックスが、敢えて下品に、かといって下品過ぎずに作り上げた作品だとも感じる。
まあ、どれも力技的お笑いではあるが。