スタッフ
監督:フランク・タシュリン
製作:ジェリー・ルイス
脚本:フランク・タシュリン
撮影:ハスケル・ボッグス
音楽:ウォルター・シャーフ
キャスト
ウーリー / ジェリー・ルイス
ローラ / マリー・マクドナルド
シキタ / 早川雪舟
キミ / のぶ・渥美・マッカーシー
ベティ / スザンヌ・プレシェット
ミツオ / 平野和義
リッジリー少佐 / バートン・マクレーン
アダムス大佐 / アレックス・ギアリー
イチヤマ / 出村龍三
日本公開: 1959年
製作国: アメリカ パラマウント作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
朝鮮戦争下の日本。後方基地の要であり、異国情緒も描けるので、多くの作品が作られた。そんな中からコメディを選んでみた。『トンデモ日本』を堪能できるが、上から目線の優しさを強調した作劇ゆえに複雑な心境になる映画。
日本、東京帽子からウサギをだすマジックを披露するウーリー(ジェリー・ルイス)が、朝鮮慰問のために日本へ向かっていた。しかし、周囲の空気も読めぬし、ベターだと思う行動が全部裏目にでるタイプ。乗機中もメインのグラマー女優に迷惑をかけ、騒ぎを起こしてしまう。
そんな彼らを乗せた軍用機が東京に着陸した。出迎え者の中に、通訳として雇用されたキミ(のぶ・渥美・マッカーシー)がいた。彼女の傍らには従弟で、両親を失い、以後、一切笑顔を見せない少年ミツオ(平野和義)の姿も。だが、タラップを降りるときもドジを踏んだウーリーに大笑い。
彼女は、従弟の笑顔に驚き、その夜、謝辞を述べるためにウーリーの滞在先を訪れて・・・
ドジで間抜けなマジシャンと日本人たちの交流を描くコメディ。
ドジというより、頭が弱いと感じさせる主人公。周囲などお構いなしに、本能の赴くままに行動して騒動を起こす。
これはジェリー・ルイス主演による「底抜け」シリーズ全般を通して描かれる設定である。
本作も然りで、ルイスの相棒として登場するのは「白ウサギ」。特撮などもあるが、アニメのふてくされキャラの態で中々面白い。というよりもルイスを喰ってしまうほど。
一方で、日本人たちは、ステレオ・タイプだ。英語に堪能な美人、事故で両親を失い、塞ぎ込む少年。
その少年との交流がメインとなり、心開いた少年が主人公の子供になりたいと思い始めるから、人情派ドラマも加味されていく展開。
先ず、ドジばかり踏む主人公に憧れる日本人少年という設定も、上から目線を感じるし、元十両力士「能登の山」であった出村龍三を大男のプロ野球選手として登場させ、知力がなく体力のみで押してくるというサブ・キャラなども、アメリカ人が日本人をどのように見ていたかが窺われ、やはり消沈。
極め付けは早川雪舟だ。本作の前年「戦場にかける橋」(1957)での収容所長の役柄と同じ衣装で登場させ、例の音楽まで流す念の入れよう。
確かに、笑ってしまったが、それは反面的に「戦場にかける橋」に於いては、差別的に描かれていなかったからだとも思う。
どの道、着物の着こなしや、和食の盛り付けなど、噴飯ものであるが、それは本作が一切、日本でロケされず、アメリカだけで撮影されたからであろう。
また、主人公が決死の慰問活動に行く朝鮮すら、アメリカ国内での撮影で、バジェットとして仕方ないのだろうが、どうにも中途半端。
とはいえ、コメディである。しかもチョット下品系の。そもそもルイスのコメディ・センスは日本人には馴染みずらい一面もあろう。
ただ、富士山上空に星が幾つも煌めく「パラマウント」のトレードマークは笑えた。
日本を理解しようとするよりも、アメリカ人がイメージする日本の姿を描きだす。
何も舞台が日本でなくて、別の国でも同じだろうと感じざるを得ないコメディ。
ただし、ヒロイン役のぶ・マッカーシーと、本作がメジャー・デビューのスザンヌ・プレシェットは目の保養になる。
いかにもルイスらしいドタバタ作品。