恋人たちの場所 – AMANTI(1968年)

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スタッフ
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
製作:カルロ・ポンティ
脚本:チェザーレ・ザッヴァッティーニ、他
撮影:パスクァリーノ・ディ・サンティス
音楽:マヌエル・デ・シーカ

キャスト
ジュリア / フェイ・ダナウェイ
ヴァレリオ / マルチェロ・マストヤンニ
マギー / カロリーヌ・モーティマー
グリゼルザ / カリン・インゲ
パーティーのホスト / エンリコ・シモネッティ
弁護士の妻 / エスメラルダ・ルスポーリ
マリー / イヴォンヌ・ジルヴェール
老人 / デヴィッド・アーシェル
パーティーの客 / ミレッラ・パンフィリ

日本公開: 1969年
製作国: イタリア、アメリカ C・ポンティ・プロ作品
配給: MGM


あらすじとコメント

前回は「愛の不毛」を描き続けたミケランジェロ・アントニオーニ作品。今回も、ある意味で「愛の不毛」を描く内容。ただし、監督はヴィットリオ・デ・シーカにして、主演はイタリアを代表するマルチェロ・マストロヤンニ。なのに共演はアメリカのフェイ・ダナウェイという作品。

イタリア、北東部リニャーノアメリカ人のジュリア(フェイ・ダナウェイ)は、以前空港で声を掛けられたイタリア人技師ヴァレリオ(マルチェロ・マストロヤンニ)の下を訪ねた。しかし、双方とも既婚者である。

そんなジュリアは二日間しかいられないと告げる。何とか延ばせないかと尋く彼に、もし第一印象と違って嫌われるのは嫌だからと答えた彼女にヴァレリオが微笑んだ。

お互いに中年でありながら、男と女の部分を忘れていないようだ。そして、二人は・・・

不倫男女のありがちな設定を描くデ・シーカ晩年のメロドラマ。

いかにものイタリア男に、たった一度、紳士的にナンパされ、実際にイタリアまで来てしまう人妻。

しかも逢瀬の場所は、人里離れた草原の一軒家で、それなりの邸宅。

まったくもって素晴らしい設定だ。兎に角、既に恋に落ちている前提でスタートする。

ところが、彼女にはどこか不安が付き纏う。彼を待つ邸宅にあるアンティークな大時計の針を自分で止めてみたり、テレビから流れるカー・レースのクラッシュ場面など、それは不倫への期待と心配ではなさそうという思わせぶりな進行。

果たして、彼がやって来てからはすべてを忘れるが如く愛欲に溺れて行く展開。

ストーリィらしい起伏はなく、ただヒロインの隠しているものが何であるかを、思わせ振りな描写で見せて行く進行。

それだけ、といえばそれだけの作品。ただし、デ・シーカも物語を追うだけでは起伏に欠けると分っていたようで、主役二人のそれは素晴らしい衣装や、オープン・カー、豪華な邸宅、息を飲む大自然の美しさという『お洒落』で『美しい紀行』という、まるで女性向けファッション雑誌を丸一冊分見せるような作劇。

しかも音楽もアメリカの有名ジャズ・シンガー、エラ・フィッツジェラルドに歌わせるなど、当時、散々流行った「ファッション誌系メロドラマ」として昇華させようとした作品。

確かに、見事に二枚目に見えるマストヤンニの演技と、いかにもヤンキー的美貌と風情のダナウェイの相反する存在感は面白いし、双方がまったく別な次元での意識を持って披露する演技合戦も興味深い。

ただし、これまたいかにもヨーロッパ映画らしく、物語性に起承転結を求めないで、人間の揺れ動く心情に寄り添いつつ、観る側の価値観なり、心理状態に委ねられるのであるが。

それでも、何てことない内容を、何てことなくはない、と描いていくデ・シーカらしいヴェテランの実力を嗅ぎ取れる。

これがアメリカ系監督であったら、途中棄権するかもしれないと思わせるだけでも、流石のデ・シーカ。

ただし、本当に何てことない作品ではある。

余談雑談 2018年5月26日
稀にランチに行くブラジル料理屋。店のスマホアプリをダウンロードし、スタンプ4個で100グラム100円になるブッフェ・スタイルで大人気になった。 ところが、自分はスマホ自体がないので関係なく、平日グラム180円、土日200円の料金でしか食べら