スタッフ
監督:ピエトロ・ジェルミ
製作:ピエトロ・ジェルミ
脚本:P・D・ベルナルディ、T・ピネッリ、P・ジェルミ
撮影:アイアス・バロリン
音楽:カルロ・ルスティケリ
キャスト
スビザ / ダスティン・ホフマン
マリア・ローザ / ステファニア・サンドレッリ
カロリーナ / カルラ・グラヴィーナ
オレステ / ドゥイリオ・デル・プレーテ
父親 / ルイジ・バゲッティ
マリア・ローザの父親 / サロ・ウルチ
医師 / レンツォ・マリニャーノ
マリア・ローザの母親 / クララ・コロシモ
カロリーナの父親 / ダニエレ・パテッラ
日本公開: 1973年
製作国: イタリア リッツォーリ・フィルム作品
配給: CIC
あらすじとコメント
前回「刑事」(1959)の主演と監督ピエトロ・ジェルミ。監督としては庶民のシニカルな恋愛コメディが多い。本作も然り。晩年のいかにも彼らしい作品。
イタリア、マルケ銀行勤務のスビザ(ダスティン・ホフマン)は、父と二人で暮らす真面目な青年だ。30歳近くにもなるので、そろそろ結婚を考えたいが、いかんせん相手がいない。
そんな彼は薬局に勤めるマリア・ローザ(ステファニア・サンドレッリ)を見て、一気に心を奪われた。しかし、小心者の彼は声を掛けられない。何度もストーカーのように彼女の後をウロチョロするしかなかった。
今晩も彼女の仕事終わりを見計らって、薬局の近くまで行った。しかし、またもや声を掛けられない。すると、そこに彼の悪友オレステ(ドゥイリオ・デル・プレーテ)が、彼を認め近付いてきた。
目的がばれては大変だと、素知らぬふりをするが、何と彼が彼女を見初め、ナンパしてしまい・・・
強烈ワガママ妻を持った青年のドタバタ振りを描くコメディ。
気弱な青年。見初めた女性は、かなりしたたかで、逆に、まんまと女性の策略に嵌って結婚してしまう。その後は、彼女のやりたい放題。
その上、女性の両親もかなりのワガママだった。結果、主人公同様、彼の父親まで被害に遭って行く始末。
子供でもできれば、また違う人生になるかもと思い描くが、そう簡単に妊娠しない。妻の両親からも子供を催促され、益々、窮地に陥っていく主人公。
いかにもジェルミらしい、パワフルなというか、かなり強烈なヒロインに翻弄され、色々策を講じるが、所詮、男は女には敵わないと教えてくれる内容である。
しかも、本作の鍵は、当時新しく施行された法律を取り入れた設定になっていること。
それは1970年の「離婚法」である。それまでカトリックの総本山という自負があるイタリアは、何と離婚が出来なかったのだ。
ならば、妻を殺害しようと画策する男を描いたのが、やはりジェルミ監督による「イタリア式離婚狂想曲」(1961)である。その作品で、主人公が再婚したい相手役を演じたのが、本作の妻役ステファニア・サンドレッリ。
本作はその法案が可決されたことで、主人公は妻と離婚しようとする展開に相成って行く。ただし、当然、一筋縄ではいかない相手でもある。
イタリアの男というと、いかにもラテン系なノリで女性好きというイメージがあるが、主人公は真逆。で、主人公の悪友が、絵にかいたようなナンパ男。
だからこそ、主人公が惚れた相手とは結婚するなと忠告する。その女性の本性を見抜いているからこその助言だ。こういうところは、遊び人ゆえの経験値であるとばかりに。
『結婚』が人生の総てを変える。つまり、法律上離婚が出来ないとなれば、優位に立ち女王のように振る舞い君臨できると確信する女性もいたということである。
それを実行するには絶好の男。そのしたかかな人生設計を持つヒロインが、初めから展開する思わせぶりな駆け引きから、激しい結婚生活まで、興味深い進行である。
当然、主人公側にも反撃というか、男特有の逃げ的一手、という進行になり、そこで「離婚」の成否がカギとなる。
何故に、主役がイタリア人らしからぬダスティン・ホフマンかと思ったが、成程上手い演技で納得させてくれる。
ジェルミのコメディには欠かせない女優ステファニア・サンドレッリ演じる妻も、バイタリティに溢れ、男どもを翻弄していく逞しさを醸して微笑ましい。
ただし、男性は、身につまされて笑えないと感じる人もいようか。
いかにもイタリア製らしい、バイタリティとシニカルさを持ったコメディ。