走り来る人々 – SOME CAME RUNNING(1958年)

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スタッフ
監督:ヴィンセント・ミネリ
製作:ソル・C・シーゲル
脚本:ジョン・パトリック、A・シークマン
撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ
音楽:エルマー・バーンスタイン

キャスト
ハーシュ / フランク・シナトラ
ディラート / ディーン・マーティン
ジニー / シャーリー・マクレーン
ハーシュの兄 / アーサー・ケネディ
グエン / マーサ・ハイヤー
イーディス / ナンシー・ゲイツ
アグネス / レオラ・ダナ
フレンチ教授 / ラリー・ゲイツ
ドーン / ベティ・ルー・ケイム

日本公開: 1959年
製作国: アメリカ S・C・シーゲル・プロ作品
配給: MGM


あらすじとコメント

シャーリー・マクレーンが「アバズレ」役で出演した映画で続ける。共演は大御所フランク・シナトラとディーン・マーティンで、彼女の出世作とも呼べる人間ドラマ。

アメリカ、インディアナとある早朝、故郷である田舎町に兵役を終えたハーシュ(フランク・シナトラ)が、長距離バスで到着してきた。二日酔いで、どう見ても安ホステス風にしか見えないジニー(シャーリー・マクレーン)が、何故同行しているかさえ覚えていない始末。彼はジニーに金を渡すと知り合ったシカゴへ帰れと冷たく言い放った。

ハーシュにすれば18年振りの帰省であるが、何故か家族を避けるようにホテルへ投宿した。どうやら訳があるようだ。何せ、小さな町であり、彼が戻ってきたことは既に噂になっており、兄が慌ててホテルへやって来た。

ハーシュは両親の死を知り、やはり溜まった鬱憤があることを告げた。兄が無理やり夕食に招待し、渋々同意するハーシュ。

同意はしたものの、気の進まない彼は酒場に向かう。そこで、賭博師のディラート(ディーン・マーティン)が声を掛けてきた・・・

田舎町で繰り広げられる悩める人間たちの葛藤を描く佳作。

二冊だけ小説を出版したがスランプで書けない兵役上がりの主人公。

主人公の優しさに触れ、思慕の情を持ち、付いてきた頭が弱い女。そして、主人公と妙にウマが合い、一緒に行動するようになるギャンブラー。

多感な一人娘を持つ主人公の兄夫婦や、主人公が一目惚れする文芸評論家で大学で教鞭をとる女史などが絡む進行。

小さな田舎町のみで生まれ暮らす側と、他の場所から逃れるようにやってきた人間たち。

それぞれに違う葛藤がある。主人公は子供時代に捨てられるように追い出されたことに劣等感を持ち、それで小説を上辞したが、現在はスランプ中で酒浸り。

そこに主人公を慕うアバズレ女と、正反対の知的女性の微妙な三角関係が発生して行く。

主人公からすれば、単純に捨て犬の態で纏わり着いてくるホステスと自分の小説のファンだが、冷静に分析し、叱咤激励しようとしてくれる知的女性の極端な差は、自身の弱さを前提に、どのような化学反応が起きて行くのか。

しかも本作では、「三角関係」が主人公とアバズレ女に横恋慕する男、兄夫婦と兄の女性秘書と三つも絡んでくる。

登場人物も多く、人間関係は複雑であり、誰もが身勝手な価値観優先ゆえの軋轢と葛藤を持っている。

アメリカ的人間ドラマとしてはありがちな設定でもあるが、ミュージカルもこなすヴェテラン監督ヴィンセント・ミネリと手馴れた俳優陣によって、混乱させずに上手く仕上がっていると感じた。

決して帽子を脱がないディーン・マーティンの設定や、マクレーンの頭の弱さイコール薄幸を醸す、一瞬にして顔が変わる喜怒哀楽感情の起伏を見せる演技が圧巻。

この出演陣で決して明るくない、というよりも、むしろ重苦しい閉塞感のあるドラマであり、鑑賞後感は決して、良くないドラマである。

だが、50年代後半の名匠ダグラス・サーク的内容を違うティストで描いたことは評価に値する佳作。

余談雑談 2018年8月4日
また一軒好きな店が閉店していた。オジサンが独りで切り盛りしていた8坪程度の小さな洋食店。場所は護国寺の外れ。 出入りしている編集部が近くにあったが、震災後、建物に難ありと判明し、数百メートル離れたビルに移動した。なので、足が遠退いていた。