面白い番組に出会った。BS朝日で現在も放送中の「迷宮グルメ 異郷の駅前食堂」という旅&グルメ番組である。
一発屋お笑い芸人のヒロシが単独でヨーロッパやアジアのローカル駅で下車し、近隣散策と食堂を探すもの。
ホスト的風貌ながら、自虐ネタで売った芸人で、現在は40代後半にして、未だに金髪。そこそこ好きな芸人だったし、何よりも明るくない性格ながら、妙に真面目な人物像が好印象。
そんな彼が、不安なのか、少し開き直っているのか、中学生レベルの英語で、英語圏以外を旅する。
日本語で尋ねて相手のコメントを字幕という、いかにも流れ的編集処理ではなく、ちゃんとカタコト英語で挑戦させるので、危うさを醸し、彼の人となりが理解できる。ただし、レストランの入口で「ディス・ショップ・イズ」とか聞くから、少し笑える。
しかも訪ねる場所が、チェコやベルギー、スロベニア、アジアはトルコ、タイ、ミャンマー等で敢えて、メジャー観光地でなく、ローカル線の、そこどこよ的場所なのだ。
現地の生活レベルが分かる所であり、流暢な英語を操る者が居ないような場所ばかり。現地コーディネーターなり、通訳は同行していそうだが、あくまでヒロシが体当たりする。
かといって、過剰な芸で笑いを誘おうとして知的レベルの低さを露呈する恥さらし言動がない。それに、ありがちな盛り過ぎる褒め言葉や、嘘っぽい「おいしい」を連発もしない。
旅グルメ番組は、どうしても中の上的場所とホテルの豪華夕食等ばかりで、中年以上の女性旅や定年後夫婦が行きたくなるようなものが多く、自分のレベルとは違うので苦手なのも多い。
そんな自分に適した番組なのが嬉しい。ヨーロッパは歴史の流れを感じさせ、アジアでは、どこか取り残された感が漂う場所を選んでいる気もする。
要は、通常なら絶対に放送しない汚い路地裏や終戦直後のバラック群のような地域を平気で映しだす。しかし、生活感がハンパなく漂う。
要は、自分がしてみたい旅でありどこか「男はつらいよ」的旅情感。言い換えればバックパッカー的視点でチョイスする未知の国と地域。
ふらりとひとり旅して、自分と同じ等身大の現地人の通常生活を覗き、口に合うか合わぬかは分らぬが、その地域ならではの貧しそうな食事を現地人の中で食べるてのが、今の憧れの旅行スタイルである。
まさしくそれを描いている番組。そもそもテーマ曲がチャップリンの「ライムライト」で、食堂発見時は何故か「荒野の用心棒」という、クラシカル映画ファン心理を刺激する。
でもな、こんなヘソ曲がりな自分がハマる番組など、すぐ終了になってもおかしくないわな。そもそも海外ロケだし、ギャラが安い芸人独り旅とはいえ製作費はかかるはず。
それでも、毎週見るのが楽しみな番組である。