モーリス – MAURICE(1987年)

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スタッフ
監督:ジェームス・アイヴォリー
製作:イスマイル・マーチャント
脚本:キット・ヘスケス・ハーヴェィ、J・アイヴォリー
撮影:ピエール・ロム
音楽:リチャード・ロビンス

キャスト
ホール / ジェームス・ウィルビー
ダーハム / ヒュー・グラント
スカダー / ルパート・グレィヴス
バリー医師 / デンホルム・エリオット
デューシー / サイモン・キャロウ
コーンウォリス / バリー・フォスター
ホールの母 / ビリー・ホワイトロー
フォスター博士 / ベン・キングスレー
リスリー / マーク・タンディ

日本公開: 1988年
製作国: イギリス アイヴォリー・フィルム作品
配給: フジテレビ、ヘラルドエース


あらすじとコメント

前回の「マイラ」(1970)は、ハリウッド製性転換ファンタジー。ところが、どこかイギリス映画を感じさせる妙な作風でもあり、ならば今回はいかにもイギリス的青年らの禁断の恋を綺麗に描いた文芸作にしてみた。

イギリス、ケンブリッジシャーケンブリッジ大学に進学してきたホール(ジェームス・ウィルビー)は、幼少期に父を亡くし、母と姉と妹という母子家庭で育ってきた青年。ゆえに男子だけの全寮生活は驚きの連続であった。

そんな彼は同室の仲間に誘われ、とある討論会に出席する。その中に一級上のダーハム(ヒュー・グラント)がいて、彼の知性と優雅さにすっかり魅了されてしまう。しかもダーハムは法律で禁止されている同性愛の信奉者でもあった。

恋もしたことがないホールは、次第にダーハムの世界観に感化されていき・・・

禁断の同性愛に傾倒していく青年たちを格調高く描くドラマ。

カソリック主流の20世紀初頭。同性愛は『悪魔の汚らわしい誘惑』と忌み嫌われ、法律で罰せられる対象であった。

そんな時代に、禁断だからこそ沈美的な憧れを感じてしまう思春期の青年たち。

主人公は、憧れの先輩から同性愛の素晴らしさを説かれ、次第に生まれて初めて覚醒した恋心に焦がれていく。しかし、当然、大ぴらに出来ずに、平素は素知らぬ態度を取らなければならないことが、却って感情を昂らせていく。

そんな青年たちが辿って行く姿を追う内容である。

ある意味、時代を忠実に再現したコスチューム・プレイの中で、美青年たちが禁断の恋に傾倒していく姿は、いかにも男子全寮制が多いイギリスならではの情欲とも感じられる。

事実、イギリス映画に於いては、全寮制学生の男色を直感させる「IF もしも・・・」(1968)もあり、後にゲイだとカミング・アウトしたイギリス俳優も多い。本作に出演しているデンホルム・エリオットもそのひとりである。

ストーリィとしては、気持ちが抑えられなくなって行く主人公と、対照的に政治家を目指すために狡猾に変貌していく者やら、嫌味で理屈っぽい人間が男色発覚により逮捕され、高い地位から滑り落ちて行ったり、更に無学ゆえストレートな肉欲で挑発してくる青年など、どうにも、どうやって感情移入して良いのか解らない人物ばかりであった。

初公開時の日本では、女性ばかりが群がったというのも理解できる。現在では『ボーイズ・ラブ』というジャンルが確立されたが、個人的には何とも不可思議な感覚で引き摺られた。

静かだが激しい恋慕と情炎が、格調高い映像で綴られていくのだが、それが逆に気色悪さと薄ら寒さで包み込まれる感覚にも陥った。

決してバレてはいけないというサスペンスがスリリングに展開され、その感情が爆発した時のグロテスクさに鳥肌が立つ。

禁断の恋といえば「不倫」というのが定石であったが、それを美青年たちが秘めたる愛憎に溺れていくことをストレートに描いた作品としては上手くまとまっている。

だが、ジェームス・アイヴォリー監督の作風自体に、あまり惹かれない自分としては、何を持ってハッピーエンドと呼べるのかと、複雑な感覚が勝った作品。

ただし、映像は美しい。

余談雑談 2018年9月8日
沖縄に行く、と決めた。去年は、脊髄骨折した母親のセミ介護の影響で沖縄に行けなかった。 そんな母親も完全回復し、骨折など忘れている風情なので、徐々に理由を付け、単独店番を頼む機会を増やした。 そして母の同意も得て、いざ沖縄。時期は10月の連休