スタッフ
監督:オットー・プレミンジャー
製作:オットー・プレミンジャー
脚本:ウェンデル・メイズ
撮影:サム・リーヴェット
音楽:ジェリー・フィールディング
キャスト
レフィングウェル / ヘンリー・フォンダ
クーリー / チャールス・ロートン
アンダーソン / ドン・マレー
マンソン / ウォルター・ピジョン
スミス / ピーター・ローフォード
大統領 / フランチョット・トーン
ハドソン副大統領 / リュー・エアーズ
ドリー / ジーン・ティアニー
ゲルマン / バージェス・メレディス
日本公開: 1965年
製作国: アメリカ シグマ・プロ作品
配給: 東和 ATG
あらすじとコメント
存在感抜群の俳優ヘンリー・フォンダ。今回は政府要人を巡る政治ドラマにしてみた。良識派と自惚れるアメリカの政治家らのスタンスが解る作品。
アメリカ、ワシントン大統領(フランチョット・トーン)は、現在空席の国務長官候補に理論派で知られる学者のレフィングウェル(ヘンリー・フォンダ)を指名した。
それにより党内から批判の声が湧き上がった。それはレフィングウェルには敵も多く、政府内で不協和音が生じるし、スキャンダルでも持ち上がったら大問題だから。院内総務のマンソン(ウォルター・ピジョン)は、不和の芽は初めから刈り取るべきだと大統領に忠告するが、逆に、だからこその協力を求められた。
その後、マンソンは副大統領から、大統領の状況が芳しくないとの情報を得る。益々、困惑するが、そんな中、かつてレフィングウェルが共産主義団体と交流があったという極秘情報がもたらされ・・・
重要閣僚ポストを巡る駆け引きを描く社会派ドラマ。
米ソ冷戦下の時代。国務長官候補に挙がったのは憎むべき共産主義者たちと親交があったかもしれない男。それにより政府と党内で真偽を明らかにしようとしていく内容。
候補の主人公は公聴会でキッパリと事実否定をするが、その後も、新事実が暴露されていき、党内が益々混乱していく。
果たして、そんな男を頑なに推薦し続ける大統領の思惑やら、タカ派は是が非でも降ろしたいと様々な画策を続けて行くし、候補者自体も曰くありげ。
そこから派生し、証言者の同性愛疑惑まで絡まって来て、えげつない男たちの葛藤と欲望が繰り広げられる。
いかにも曲者ばかりの男社会の嫉妬が渦巻き、そんな中で、国民そっちのけで、特権階級であることも忘れ、我こそは素晴らしい政治家であると自惚れる魍魎たちの醜い政治ドラマと共に、疑惑の真偽や、強欲な人間たちの正論がややこしくさせ、推理ドラマとしても進行していく。
だが、オットー・プレミンジャー監督の「やらしさ」と「しつこさ」が、どこか押し付けがましく進行していくので、政治不信になる心情以上に、あからさまな反ソや、同性愛への差別的表現が登場し、逆に統一感を削いでいるとも感じた。
ヴェテランの名優たちが勢揃いし、それぞれの立場で熱演を繰り広げるのは興味深いが、誰一人肩入れできる登場人物がいなかったので、かなり「しんどい」とも感じた。
制作年代を考えれば、核戦争一歩手前まで行った『キューバ危機』以前であるので、持って行き場と落とし所に苦心したとも感じる。
ただし、後に様々制作される「大統領とホワイトハウス」モノに多大な影響を与えているのも事実。
ある意味、その手の政治ドラマの先駆け的作品であることは否定できない。しかも、後の作品群の方が、本作の弱点を改善し、更に深いドラマなり、サスペンス映画にすらなっているのだから、本作の存在は忘れるべきではない。