スタッフ
監督:フランクリン・J・シャフナー
製作:スチュワート・ミラー、ローレンス・ターマン
脚本:ゴア・ヴィダル
撮影:ハスケル・ウェクスラー
音楽:モート・リンゼイ
キャスト
ラッセル / ヘンリー・フォンダ
キャントウェル / クリフ・ロバートソン
メイベル / エディ・アダムス
アリス / マーガレット・レイトン
バスコム / シェリー・バーマン
ホックスタッダー / リー・トレイシー
スー・エレン / アン・サザーン
ジェンセン / ケヴィン・マッカーシー
キャントウェルの兄 / ジーン・レイモンド
日本公開: 未公開
製作国: アメリカ ユナイト作品
配給: なし
あらすじとコメント
前回紹介した作品で、国務長官「候補」の役柄を演じたヘンリー・フォンダ。今回は国務長官役にして次期大統領「候補」を演じた作品。未公開ながら、見事に政界の裏側を描破した秀作。
アメリカ、ロサンゼルス来る大統領選に党の代表を指名すべく熾烈な選挙戦が始まっていた。
有力候補は二名。現職の国務長官ラッセル(ヘンリー・フォンダ)と、若手の上院議員キャントウェル(クリフ・ロバートソン)である。前大統領ホックスタッダー(リー・トレーシー)が、どちらに支持を表明するかで雌雄を決しそうである。
そんな前大統領は個別に二人を訪れ、同じ質問をする。まったく別な回答をする二人。どうやら、どちらも完璧な候補者ではないとも受け取れる。しかし、大統領戦立候補者は全部で五人であり、否が応でも、その中から党としての統一候補者を決めなければならない。
ヴェテランで国務長官でもあるラッセルは、優柔不断な側面をのぞかせ、若いキャントウェルは貧しい出身ゆえに、強欲に前進するタイプ。
しかも、二人には、隠しておきたい過去もあるようで・・・
政治の裏側で繰り広げられる絶句するほど見事な人間ドラマの秀作。
国務長官は優しさを持ち、熟考タイプゆえ決断力に問題ありげでしかも女性好きでイギリス人の妻とは仮面夫婦状態。
一方の若い議員は、超タカ派で、貧民出身ゆえの上昇志向の塊で、どんな手を使っても相手の弱点を探し、脅迫まがいまでして現在の地位を勝ち取ってきた男。
国務長官はエリート教授を選対本部長に据え、若い方は前回の党内大統領候補選にでたが落選した過去を持つ実兄がサポートしている。
それぞれの夫人も愛が醒めていたり、アル中気味だったりする。その他は泡沫候補らしく、一次投票では決定しないだろうと選対本部長同士が票読みし、他候補陣営の懐柔にかかったりもする。
目立ちたがり屋の女性副議長は自分こそ「キングメーカーよ」と蝶のように両陣営に顔を売る。
その他にも、何ともえげつない人間たちばかりで、正に魍魎跋扈状態である。
結局、そういう感覚の人間でないと大統領の有力候補になれないし、何とか取り入ろうとする輩から、足の引っ張り合いをする人間ばかり。
そして前大統領もいかにも老獪さを漂わせ、有力候補のどちらに付くかを素知らぬ顔で判断している模様だ。
ストーリィもとても練られており、次々と両陣営に災難や寝返り等が数珠繋ぎに起きて行き、息を飲むサスペンス仕立てで進行して行く。
主演の二人も名演技であり、フォンダは何度か大統領役を演じているし、ロバートソンは『ジョン・F・ケネディ俳優』とも呼ばれていた。つまり、各々に大統領候補としてリアリティがあるキャスティング。
他にも様々な人間が登場してくるが、キャラクターと演者の違いで混乱せずに引き込まれていく。
ただし、日本とはまったく違う候補者選びのスタイルなので、これほどの作品なのに未公開となったのだろうか。
とにかくアクションが一切ないのに、これほど緊迫感に貫かれた会話劇のみで息継ぎさえ忘れさせる作品はそうはない。見事なる秀作だ。