スタッフ
監督:アラン・J・パクラ
製作:ウォルター・コブレンツ
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
撮影:ゴードン・ウィリス
音楽:デヴィッド・シャイア
キャスト
バーンスタイン / ダスティン・ホフマン
ウッドワード / ロバート・レッドフォート゛
ブラッドリー / ジェイソン・ロバーズ
ローゼンフェルド / ジャック・ウォーデン
シモンズ / マーティン・バルサム
ディープ・スロート / ハル・ホルブルック
ダーディス / ネッド・ビーティ
スローン / スティーヴン・コリンズ
デビー / メレディス・バクスター
日本公開: 1976年
製作国: アメリカ ワーナー作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
今回はアメリカ政界を揺るがせた有名な実話作品。しかも前回の「オール・ザ・キングスメン」(1949)が、原題の元になっている。確かに、民主国家での最高権力者は「キング」ではなく、「大統領」だよなと納得させる秀作。
アメリカ、ワシントン現野党である民主党の地方本部に不審者が侵入し、駆け付けた警察に逮捕される事件が起きた。
容疑者は5人で、ワシントンポスト紙の新米記者ウッドワード(ロバート・レッドフォード)が裁判所に向かった。侵入犯は何故か携帯無線機を所持し、各々の所持金も多く、しかも職業を「反共主義者」やら、「警備員」と名乗った。間違いなく通常の窃盗犯ではない。しかも、警備員と名乗った男の勤務先はCIA。
社に戻り記事を起こすと、先輩記者バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)が、彼に黙って記事の訂正を始め・・・
現職大統領の失脚という実話をスリリングに見せるドラマの秀作。
権力対ジャーナリズム。当初は侵入強盗事件の態であったが、そこから取材を続けることによって、誰もが思いも付かない体制側の信じ難い腐敗体質へと行き着いていく内容。
主役の二人は実際のワシントンポスト社の記者であり、それに基づいて進行していくのだが、実に多くの登場人物がでてくるので混乱する人間もいよう。
確かに侵入犯という末端の人間から派生し、勤務先関係者や、その上司や部下といった、次から次へと名前が登場して来て、やがてホワイトハウス内の現政権の有力者の名前まで増えていくのだから、関係図でも見ながらでないと複雑であり、すぐに理解することが難しいのは間違いない。それも事実ゆえだろうが。
しかし、パクラ監督は見せ方に砕身し、実に上手く様々な手法で迫ってくる。
当初は、何も解らぬ主人公らも同様で、メモに名前や要点を書きださせ電話取材での声のみの出演やら、然るべき人間には画面に登場させつつ、微妙な取材による裏付け手法などでメリハリを付けていく。
結果については、一大スキャンダルであり、最終的に大統領辞職に行き着くのは解っているのだが、そこに辿り着くまでの過程を実にスリリングに展開させてみせる。
要はラストは知っているのに、どのように映画に魅入らせていくのかという手法に鳥肌が立った。
主役二人は既に大スターであり、演技力に定評があったホフマンとレッドフォード。
その上、マーティン・バルサムやジャック・ウォーデンという往年の映画ファンならニヤリとする「十二人の怒れる男」(1957)の再現を想起させる。しかも進行次第も似ているので往年の秀作に対するリスペクトも感じるし、どこか群像刑事ドラマ的であるとも見て取れた。
他にも、見てくれにも混乱しない顔の俳優を起用している。
しかし、本作の白眉は新聞社主幹を演じたジェーソン・ロバーズの圧倒的な存在感。
若手実力派からヴェテラン脇役まで、同画面に登場させながら、群を抜いて見事に輝きを放っている。
同じく政治腐敗の人間たちを描破した力作「オール・ザ・キングスメン」(1949)を知っている人間からすれば、原題の意味は理解できるが、残念ながら本作の公開時は未公開であり、慌てて本作の三か月後に初公開された。
なので邦題は致し方ないのだろうが、このタイトルは些か的外れとも感じるのではあるが、内容的には秀作であることには間違いない。