スタッフ
監督:マイケル・リッチ─
製作:ウォルター・コブレンツ
脚本:ジェレミー・ラーナー
撮影:ジョン・コーティ、ヴィクター・J・ケンバー
音楽:ジョン・ルービンスタイン
キャスト
マッケイ / ロバート・レッドフォード
ルーカス / ピーター・ボイル
マッケイの父親 / メルヴィン・ダグラス
ジャーモン知事 / ドン・ポーター
クライン / アレン・ガーフィールド
ナンシー / カレン・カールソン
ヘンダーソン / モーガン・アプトン
コーリス / マイケル・ラーナー
スターキー / ケネス・トビー
日本公開: 1976年
製作国: アメリカ レッドフォード・リッチ-・プロ作品
配給: ヘラルド
あらすじとコメント
前回扱った作品で、政府の陰謀を暴く記者を演じたロバート・レッドフォード。今回は、上院議員選立候補者を演じる。やはり政治の世界は怖いと感じさせる人間ドラマ。
アメリカ、カリフォルニア候補者を次々と当選させる選挙屋のルーカス(ピーター・ボイル)は、次のカリフォルニア州の上院議員選挙の民主党代表候補として弁護士のマッケイ(ロバート・レッドフォード)に目を付けた。
対戦相手は共和党の保守派で現職知事のジャーモン(ドン・ポーター)。現職ということもあり、圧倒的優勢という状況である。それでも、選挙のプロとして勝算はありそうだ。
しかし、マッケイとの面識はなく、いきなり市民のために弁護活動をする彼に直談判に行った。驚くマッケイ。当然、自分などと断るが、父親が元知事であり知名度があると。その途端に顔を曇らせるマッケイ。どうやら父親とは確執があるようだ。しかし、ルーカスの妻が反応を示した。それに刺激されたのかマッケイも表情を変える。
それらの態度を見て、ルーカスはそっとマッケイにメモを手渡した。『君は落選する』・・・
市民派弁護士の青年が政治の世界に翻弄される姿を追うドラマ。
真剣に市民らのために活動する真面目な青年。そこに、海千山千の選挙参謀らが取り入り、あれよあれよという間に候補者に仕立てていく内容。
主人公夫婦は真面目であり、成程民主党候補者としては適任に見える。しかし、圧倒的劣勢状況でもあるが、それこそ、選挙のプロたちは却って燃えるのである。
そこに全く異なる温度差が存在し、それでも真面目な主人公は、自分の価値観なり意見を優先させようと主張してくる。
それらを受け入れ実行させるが、それは主人公に挫折を味あわせるためという皮肉。流石のプロ集団である。
対する敵は18年も政治家を務める狡猾な現職知事である。主人公のことを若僧と蔑み、当初こそ相手にしていない。
しかし、選挙参謀らの心理学まで応用したTVCMの活用やら、主人公が忌み嫌う元知事であった父親が、いずれは動いてくると踏み、様々な策略を巡らせた挙句、猛追していくのである。
当然、困惑するのは主人公夫婦。それでも情勢が変化するにつれ価値観が変貌し、顔つきや所作まで変わってくるというシニカルさ。
政治とはこういう世界なのかと猜疑心に襲われてくる。やはり熱血漢が政治家を目指す「オール・ザ・キングスメン」(1949)に酷似した内容ながら、時代性を際立たせ、政治家の生涯を描いた大河ドラマ的な内容ではなく、あくまで当落という「勝負」の結果までを描いていく進行。ただし、ラストはシニカルではある。
主役のレッドフォードも市民活動家から、いかにもの議員候補へとイメージが変わる演技も上手いが、敵対候補の知事役を演じたドン・ポーターと参謀役ピーター・ボイルの存在感が抜群。
政治家とそれを目指す人間と取巻き連中の魑魅魍魎の世界は、どうにも政治不信を加速させる。
それが目的なら成功作であるが、綺麗事ばかりを言う政治家など誰も信じられなくなる絶望感をも感じさせる。