寄る年波か。記憶力に衰えを感じた。
先立て、編集部での仕事を早めに切り上げバスを乗り継ぎ、実家から1キロ程度の場所まで戻ってきた。
所用のためだが、5分で済むので、昼食をビールと共に摂るかとも考え、目的地近くに何かないかと。2時に程近い時間だったので「食堂」系がベターだな。
思い当ったのが一軒。随分と昔に行った気がするがまだ営業を継続しているか。
幸運にも営業中で開いていた。名前は知らなかったが、店名から考えると茨城県出身の方か。
躊躇わず入店したが、驚いた。店内風景に見覚えがないのだ。改装の形跡もなく、色褪せたマンガ、疲れた感じの雑誌などがあり、テーブル席が三つとカウンター。どう見ても40年は経っている猥雑な店だった。
初入店だったか。一度入ったと思い込んでいたが、と自分の記憶と印象に疑問符が付いた。
オバサンが独りで切り盛りし、ランチ時間が過ぎており、客は地元らしいお婆さんが一人だけ。壁にある手書きのメニューを眺めると魚系定食に、丼物など、至って普通の食堂。
個人的な興味は、肴になるサイドメニューの有無であるが10品ぐらいあった。それでビールなど飲んでも平気な店かの判断基準にもなる。ビールは中瓶の500円のみで大瓶はない。
この値段もどこも同じ印象だ。大瓶があれば600か650円。中瓶の問題点は、2本飲むかどうかである。容量を考えると大瓶の方にお得感があり、1本で済む。まあ、それも腰を落ち着けて飲むなという店のスタンスか。
値段も、判で押したように地域全体がほぼ同一価格。気分的にフライ系じゃないな。「冷奴」や「シラスおろし」「納豆」など定番が多く、手間いらずの取り敢えず早く、という肴だ。
で、目に留まったのが「目玉焼き」と「たまご焼き」で、双方300円。どうせなら実力を見るためにたまご焼きだと注文。甘いのかしょっぱいのかと想像しつつビールを飲んだ。
程なく、醤油さしと共に来た。ということは甘くはないな。口に運ぶと、薄い塩味のみでいわゆる「家庭の味」だった。
で、定食は「ポークソテー」にしてみた。下町らしく小さな「冷奴」に新香、みそ汁が付く。漬物は、業務用のパック品でなく、お手製か地元の八百屋あたりで仕入れたものらしく、旨い。
ポークソテーの皿には、女性らしく千切りキャベツの他に、プチトマトと胡瓜、ブロッコリーが添えられていた。
オジサンのコックだとキャベツのみという店も多いが、嬉しいし、見た目も華やぐ。
決して小綺麗な店じゃないが、嫌いじゃないな。地方にあるような雰囲気が漂い、昭和で時間が止まったような店。
ひとつ選択肢が増えたな、と笑みを浮かべたが、営業時間が11時半から。普通だろうが、ビールも一緒と考えると、以前に工事関係者らから白い眼で見られた店を連想。
やはり、こういうランチが終わった中途半端な時間がベストなのだろうか。でもな、実家だと昼食は11時前なんだよな。
それまで腹が保つかと少し複雑な心境にもなった。まして中瓶のみだしな。