愛のさざなみ – FOOLS(1970年)

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スタッフ
監督:トム・グリース
製作:H・ポーリンジャー、ロバート・ヤミン
脚本:ロバート・ルドルソン
撮影:マイケル・ヒューゴ
音楽:ショーティ・ロジャース

キャスト
サウス / ジェーソン・ロバーズ
アナイズ / キャサリン・ロス
アップルトン / スコット・ハイランズ
公園の男1 / ロイ・ジェンソン
公園の男2 / マーク・ブラムホール
私立探偵 / ロバート・C・フェローjr
ドッグ・オーナー / マーク・ハンニバル
レストランの女性 / フロイ・ディーン
歯医者 / チャック・ドーセット

日本公開: 1973年
製作国: アメリカ ヤミン&ポーリンジャー作品
配給: 日本シネラマ、NCC


あらすじとコメント

ご贔屓俳優のひとりジェーソン・ロバーズ。いぶし銀で脇役で光る印象であるが、堂々、主役を張った作品。しかもメロドラマでアメリカン・ニュー・シネマという異色作。

アメリカ、サンフランシスコのどかな公園で寛ぐ大勢の人々の中に、友人らとおしゃべりしているアナイス(キャサリン・ロス)がいた。他に、愚痴ばかり言うビジネスマン二人組、小さな子供を好き勝手に遊ばせている母親、大型犬を連れた黒人など様々だ。

そこに中年男サウス(ジェーソン・ロバーツ)がやって来て読書を始めた。奔放な子供たちが、大人たちに迷惑をかけ始め、更には大型犬をからかい始めた。ところが母親は読書に夢中で、素知らぬ顔。やがて、大型犬が唸り声をだし始めた。近くにいたサウスは、子供たちの腕をつかみ、「やめないと腕を食いちぎられるぞ」と脅した。

子供たちは母親の元へ行き、告げ口。突如、立ち上が抗議に来る母親。しかも大型犬を連れた黒人もリードも付けてるし、躾が出来ているから咬みつかないと怒鳴り始めた。口論になり、犬の飼い主の黒人に殴り倒されてしまうサウス。そこにアナイスがやって来て、ハンカチを差しだした・・・

生きがいを見いだせない中年男と若い人妻の道行きを描くメロドラマ。

B級ホラー映画俳優の中年男は、ロスから自分探しにやって来たが、人と車の多さに閉口し、何ら見いだせぬまま無為な日々を過ごしている。

それでも、すぐに文句を言うが、どこか逃げ腰で負け犬タイプ。一方、優秀な弁護士の亭主を持ちながら、あまりにも完璧で威圧的なので、家を飛びだしている人妻。

差しだしたハンカチから、やがて不倫関係になるというベタベタな展開。

知り合ってから、やたらと長い散歩をしつつの会話劇が繰り広げられる進行。そこで互いの過去を振り返りつつ、価値観なり人生観が綴られていく。

だが、どうにも惨めさが勝る中年男の自己正当性で排他的な言動ばかりが目立つ印象。

確かにB級専門ではあるが俳優であるので、シェークスピアから元祖怪奇俳優のべラ・ルゴシなど、理屈に多少の共感も出来て知性はありそうだが、いかんせん、くどい。

人妻の夫は絶対に自分が勝つという信念を持ちながら、妻の行動に合点がいかないので探偵を雇い尾行させている。

当然、二人の関係は発覚するのだが、一向に気に留めない妻。それがエリート意識の強い亭主にどのような化学反応を起こさせるのか。

登場人物のほぼ全員が身勝手で、思慮深くないし、他人など一切気にしないタイプ。

これがアメリカの病巣とも感じ、誰にも肩入れできなかった。

これらの人間を生みだしているのはまさしくヴェトナム戦争中のアメリカそのものであり、誰もが夢や希望を持てないまま、日常生活を送っているのだと謳い上げる。

若者でなく中年男の自分探しだが、まさしくニュー・シネマの設定。唐突なFBIの登場や、無関心こそがアメリカでの生きる道という人間ばかり。目新しさもないし、無関心さと身勝手さしか登場しない作品。

それでもロバーズの演技は、イヤらしく上手いし、音楽も流麗、演出も手堅い。

中でも、一番興味を惹かれたのがキャサリン・ロスの起用とラストでの展開。ロスといえば「卒業」(1967)で最愛の相手と教会から逃げ去る女優の印象が強烈だが、本作では真逆の展開と相成る。

教会でのシーンであるが、「逃げる」という意味では同じだが、でて行くのではなく、入っていく。そして、全く違う衝撃が走る。

要は「卒業」へのアンチテーゼであり、そのための彼女の起用かと思った。

しかし、それを踏まえた上でも、やはり凡庸さが勝る通俗メロドラマ。

余談雑談 2019年3月16日
調子が良くなった老母に店番を頼んでサボることが増えた。 その時は、迷わず徒歩圏内の食堂で、午前中から少しだけ飲んでのランチが愉しみだ。 手持ちは三軒。しかし、どれも帯に短し的印象。一軒はハンバーグは好きだが、しょうが焼きもイメージと違い、他