くちづけ – THE STERINE CUCKOO(1969年)

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スタッフ
監督:アラン・J・パクラ
製作:アラン・J・パクラ
脚本:アルヴィン・サージェント
撮影:ミルトン・クラスナー
音楽:フレッド・カーリン

キャスト
プーキー / ライザ・ミネリ
ペイン / ウェンデル・バートン
シューマッハ / ティム・マッキンタイア
ルー / クリス・バグビー
ナンシー / サンディ・フェイスン
女主人 / エリザベス・ハロワー
ヘレン / ジョウン・マッキンレー
プーキーの父親 / オースティン・グリーン
女学生 / ベッキー・ディヴィス

日本公開: 1970年
製作国: アメリカ A・J・パクラ・プロ作品
配給: パラマウント


あらすじとコメント

今回もマイナーなアメリカン・ニュー・シネマ作品を扱う。ライザ・ミネリの日本デビュー作で、大学生同士のありがちな<恋愛を瑞々しく描く青春恋愛ドラマ。

アメリカ、オンタリオ大学に進学するペイン(ウェンデル・バートン)が、入寮するためにバス停で待っていると、突然、奔放で不思議なイメージのプーキー(ライザ・ミネリ)が、親しげに声を掛けて来た。

彼女も、彼の近くの大学への入学で、同じバスに乗るという。彼女は見送りの父親に別れを告げるから、席を確保しておいてくれと笑った。あまりにも突然の言動に戸惑い、どこか内気なペインは、素知らぬ顔で先に乗り込んだ。当然、彼女の席は確保しなかった。

ところが乗車してきたプーキーは、彼の隣に座っていた尼僧に、二人は姉弟で母親を失ったばかりで慰めてあげたいから別な席へ代われと、平気で嘘をついた。驚くペインだが、結果、長旅の道中ずっと同席することになる。

延々と話し続ける彼女に、先行きの不安とも向き合えず、大学の寮に着くペインだったが・・・

奔放な女性に振り回される大学生の姿を追う青春ドラマ。

不安に満ちた大学進学を新天地で迎える青年。同郷の女性は自分勝手で平気で嘘を付いたり、他人を翻弄するタイプだ。

お互いに新たなスタートを切るが、ヒロインはすぐに彼の寮に押し掛けてきて同級生たちを驚かせる。何でも想像以上にバカばかりで、友達など出来そうにないから、知的なあなたと時間を過ごしたいと。

あまりに唐突な言動で驚く青年だが、結局、自主性に乏しいので躊躇しつつも流されていく内容。

しかし、ありがちな揺れ動く思春期の男女らの姿であり、必然性や目新しさはない。

ベトナム戦争が激化している時期だが、反戦とか戦場に駆りだされるという男性側の不安は描かれない。

つまり、等身大の若者らのナイーブな心情の機微と恋愛による化学変化を静かに描く、いかにもニュー・シネマ的人間像を描いていく。

本作が日本デビューであるライザ・ミネリの才能が一挙に開花していると感じる。

父親がMGMミュージカルの大御所ヴィンセント・ミネリで、母親は言わずと知れたジュデイ・ガーランド。その遺伝子を受け継ぐ才能は大したもの。

ただ、美人系でないところがミソで、それを踏まえた上で、自分の表現方法は正統派ヒロインでないと悟り、まるで初期のシャーリー・マクレーンのようなコケティッシュな演技を披露している。

特に終盤での電話での独り芝居は、表情の変化が実に豊かで、この女優は伸びると直感させられる。事実、そうなって行くのだが。

また、監督がアラン・J・パクラというのも注目に値するだろう。本作以前まではプロデュース専門だったが、これが監督としてのデビュー作であり、以後は、ケネディ暗殺にインスパイアされた「パララックス・ビュー」(1974)や、ニクソン大統領を退任に追い込んだ史実を描いた「大統領の陰謀」(1974)など、社会派監督としての地位を確立していく。

ありがちな内容を背伸びせずに静かに描く恋愛ドラマだが、ミネリにしろ、パクラ監督にしろ、中々の才能の持ち主だと感じさせる作品である。

余談雑談 2019年3月23日
桜が咲き始まった東京。自室眼下の桜の名所も、既に人波が押し寄せている。寒かった冬から春になって、浮かれ気分の人が多いのだろう。 暫くは自室のあるビルから出るのも一苦労しそうだ。まあ、これは散るまでの短い間だが。 一方で驚いたのは、地元が今年