編集部へバスで向かい、いつも下車する停留所に着いたのが朝9時過ぎのこと。
そこから割と急な坂を下って行くのだが、途中は有名小学校や国立大学に挟まれた道。名残りの桜が花弁を舞い散らし歩道はピンクに覆われていた。
いつもだったら歩行者が少ないのだが、その日は違った。割とキチンとした格好の夫婦が多く歩いていた。
各学校の入口を見ると「入学式」の看板が出ている。そうか、だからか、と。
ただし、新入生は既に校内にいて、式に参列する親たちが集まる時間帯だったのだ。
寒さは残るが、桜も残る入学式。例年だったら入学式は桜が終わっている東京だが、今年は寒さの所為で幾ばくかでも残っていた。
良い思い出になるのかなと思う。他方、大人になっても覚えている新入生は、どれほどいるのだろう。自分も小学校の入学式などは忘却の彼方だから。
それにしても興味深かったのは流石の有名校密集地であり、親御さんたちの雰囲気である。
母親たちは地味なスーツに化粧。胸元に造花などあしらうのがワンポイント程度。父親はやはり地味なスーツ姿。
ところが、何を思ったのかタイトなスリーピースで帽子まで被り、英国紳士を装う父親がいた。些か、場違いな感じがしたが、その方には正装なのだろうか。
ただ、全体的な親御さんらの印象は、『エリート階級』。頭が良く、程度の良い人種だから地味でも凛としている。
ただし、個人的には、逆にオーラを作り出している印象。本当に育ちが良かったり、それなりの家系の人間は違うと。
要はオーラを作り出そうとするのではなく、自然と醸させるものではないかと。
『余裕』だとも感じる。まあ、皆さん30代で、官庁やそれなりのところにいる人々なのだろう。これから自然と醸される人種になって行くのやもしれぬ。
自分が住む下町などガサツな人間ばかりだし、見栄っ張りも単純だ。その手の人たちが住む地域には一生関係ない人生だ。
きっと負け犬の妬みだな。そんなことを思いながら編集部へ。4時間程度で一区切りがついた。
帰路も同じバス停から。帰りは昇りの急坂になる。寄る年波を感じバス停に着くと小学2、3年らしい生徒の下校時間。
誰も、静かで騒ぐ児童はいない。ただし、バスが来ると一番奥へ進み、自分らが坐る。
きっと、危ないから乗車したら他人の迷惑にならぬように奥へ行って、静かに座れという指導なのかな。
でも、途中から多くの年寄りが乗り込んで来て混雑しても、一切席は譲らない。まるでクローン人間の態だ。
この手の子供たちがやがて結婚し、代々、同じ学校へ入る。
通り過ぎる景色に、不意に名残りの桜が見える午後。桜は儚いから美しいのかなと感じた混雑するバスの中。