スタッフ
監督:トビー・フーパー
製作:トビー・フーパー、トビー・レイノ
脚本:T・フーパー、キム・ヘンケル
撮影:ダニエル・パール
音楽:ウェイン・ベル
キャスト
サリー / マリリン・バーンズ
ジェリー / アレン・ダンジガー
レザーフェイス / ガンナー・ハンセン
ヒッチハイカー / エド・ニール
祖父 / ジョン・デュガン
ハーディステイ / ポール・A・バーテイン
カーク / ウィリアム・ヴェイル
老人 / ジム・シードウ
パム / テリー・マクミン
日本公開: 1975年
製作国: アメリカ ヴォルテックス作品
配給: 日本ヘラルド
あらすじとコメント
「世にも怪奇な物語」(1967)はホラー・オムニバス作品だった。個人的には得手ではないホラー映画だが、たまには紹介してみる。B級映画ながらカルト映画として歴史に君臨する作品。
アメリカ、テキサスサリー(マリリン・バーンズ)と半身不随で車椅子のフランクリン(ポール・A・パーティン)は兄妹だ。そんな彼女らは友人と5名で夏休みのドライブ旅行にでていた。
砂漠や湖水地帯を抜け、とても楽しい旅に大満足している一行。とある田舎道を走っていると一人の青年がヒッチハイクをしていた。こんな場所で、と車に乗せるが、突然、ナイフを取りだすと自分の掌を切った。驚くサリーたちだが、今度はフランクリンの手を切りつけた。恐怖に陥る一行だったが、何とか取り押さえ、車から降ろして逃げだした。
あまりにも異様な体験だったので理性を失うが、時は夕暮れ。先ほどのこともあり、このまま車中泊は嫌だと思っていると、一軒家を見つけた。今夜はそこに宿泊させてもらおうと友人の2名が家の扉に近付いて・・・
見知らぬ場所で死の淵に追い込まれる若者を描くホラー。
身障者を含む仲良しの5人組。誰もが優しく、暴走しそうな不良っぽい奴はいない。それなのに、いきなり次々と虐殺されていくという内容。
設定がアメリカの中西部の片田舎という場所がミソだろうか。
カルト教団として喧伝されているKKK団を想起させつつも、限定された血族による血祭りという設定だが。
説明的なものはなく、あくまでトビー・フーパー監督の個性で押し通す進行。
唐突に、ショッキングな殺人で驚かせ、そこに無学な開拓民の流れを汲む閉鎖的な常識で生きてきた親族の病巣をストレートに見せ付けていると感じた。
気色悪いシーンのオンパレードであり、特に皮の仮面を被った、いかにも知識階級ではない巨漢の若者が大木を切り倒すチェーンソーでどこまでも追いかけてくる場面は、怖いながらも失笑を禁じ得ない。
しかし、そこに生存欲求があり、子孫を残せるほどの知能や肉体もない雄としての人間本能が見事にストレートに伝わってくるのだ。
そこには男系家族ゆえの悲壮感と儒教的観念とイタリアのマフィアのような繋がりをも想起させる。
だが、恐怖とあまりにも突き抜けた執拗さにコメデイ要素さえ漂わせて、移民大国アメリカの元来から抜けられない、ジャンク・フードしか食せなく、結果、肥満になりざるを得ない下層階級の病巣をも感じさせる。
ただし、気色悪さが常に映画を先導するので、嫌悪感を増幅させつつ、あくまでB級だからこその問題提起を感じさせる。
特に最年長の死にかけの老人にハンマーを持たせるシーンは笑いを禁じ得ないが、それ以上に、アメリカ人の恐怖を際立たせる。
成程、21世紀に初の黒人大統領が誕生したが、次に就任したのは知識人らが間違ってもあり得ないと騒いだ金満ビジネスマンというのも、本作のような人間が厳然と存在し続けていると邪推したくなるカルト・ホラー作品。