スタッフ
監督:ブライアン・デ・パルマ
製作:エドワード・R・プレスマン
脚本:ブライアン・デ・パルマ
撮影:ラリー・バイザー
音楽:ポール・ウィリアムス
キャスト
リーチ、怪人 / ウィリアム・フィンレイ
スワン / ポール・ウィリアムス
フェニックス / ジェシカ・ハーパー
ビーフ / グリット・グレアム
フィリビン / ジョージ・メモッリ
ジューシーフルーツA / ジェフリー・コマナー
ジューシー・フルーツB / アーチー・ハーン
ジューシー・フルーツC / ピーター・エルビン
バンドマン / コリン・キャメロン
日本公開: 1975年
製作国: アメリカ ハーバー・プロ作品
配給: 20世紀・フォックス
あらすじとコメント
今回もホラー系作品。とはいっても、かなり異色な音楽映画仕立てという、ぶっ飛んだ設定ながら、妙に面白い作品。
アメリカ、カリフォルニア作曲家のリーチ(ウィリアム・フィンレイ)は、ロックの楽曲で一大叙事詩として『ファウスト』を作曲した。
そんな彼はレコード会社の社長スワン(ポール・ウィリアムス)と知り合い、売り込もうとする。ところが、このスワンという男がかなりの曲者で、リーチの楽曲を横取りし自分の作品として公表しようと考えた。
気弱なリーチだが、何とか阻止しようと奔走するものの、次々と汚い手を使って来るスワンに嵌められ、最後は刑務所送りにされてしまう。しかも、執拗な命令で、歯を抜かれたりと悲惨な刑務所生活を強いられた。
遂に復讐を決意したリーチは脱獄し、改ざんされて発売された自分の楽曲を止めようとスワンのレコード工場に侵入。
ところが誤ってプレス機に顔を挟まれてしまい・・・
復讐を誓った男が驚愕の真実に直面するファンタスティック・ホラー。
元々は、ロン・チェイニー主演で映画化された「オペラの怪人」(1925)のリメイクである。
とはいえ、ブロードウェイのヒット作で日本でも長年に渡り公演されているミュージカル「オペラ座の怪人」とは違う筋立て。
原作こそ同一だが、そこに悪魔に魂を売り、代わりに知識と幸福を得る男を描く戯曲「ファウスト」を絡めた内容。それをロック・ミュージカル風に仕立て、ポップなグロテスクさを加味して作られてたのが本作。
監督は、本作前年の「悪魔のシスター」(1973)に始まり、以後も「キャリー」(1976)、「愛のメモリー(1976)など、ホラー系作品を数多く輩出するブライアン・デ・パルマ。
そんな監督の中でも、カルト的作品で、熱狂的なファンも数多いのが本作。
また、悪役を嬉々として演じるポール・ウィリアムスは、有名なカーペンターズにも楽曲提供している作曲家で、本作の音楽も手掛けている。
要は、かなり異質というか、変わった人間たちによって制作された作品である。
内容も「オペラの怪人」をモチーフにしながら、現代人の精神的病巣を加え、自由を謳歌する若者らが名誉と出世のために、誰もが悪魔に魂を売り払う可能性を露呈させる。
というよりも、ヴェトナム戦争後遺症の所為か、刹那的で何ら考えなくして、ただ騒ぎたい若者風情をも描いている。
故に、カルトとして認知する熱狂的ファンが存在し続けるに違いない。
19世紀のパリのオペラ座を舞台にしたオリジナルから、随分とアレンジが施されているが、それでも製作年度を考えるとかなり斬新である。
気弱だが才能あふれる青年が豹変し、独裁的に振る舞う社長、生意気な歌手、夢を叶えるためには肉体をも平然とさしだす女優志願者など、いびつで、誰一人「良心的」人間が登場してこない。
そこにロックという音楽を被せ、トランス状態に陥らせながら進行する作品。
カルト映画として人気があるのも頷ける。