スタッフ
監督:スタンリー・ドーネン
製作:アーサー・フリード
脚本:アラン・ジェイ・ラーナー
撮影:ロバート・ブランク
音楽:ジョニー・グリーン
キャスト
ボーエン / フレッド・アステア
エレン / ジェーン・パウエル
ブリンデール卿 / ピーター・ロフォード
クリンガー / キーナン・ウィン
アン / サラ・チャーチル
エレンのメイド / マーガレット・バート
ゴードン / フランスシス・ベセンコート
スチュワード / アンドレ・チャリス
踊り子 / ベア・エレン
日本公開: 1956年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: MGM
あらすじとコメント
「ファントム・オブ・パラダイス」(1974)は、異色ミュージカル系音楽映画だった。今回は王道のMGM作品ながら、どこか異質さを感じ、且つアステアの至芸が堪能できる作品にした。
アメリカ、ニュー・ヨークボーエン(フレッド・アステア)とエレン(ジェーン・パウエル)はブロードウェイの人気兄妹コンビだ。今日も舞台が終わるとマネージャーのクリンジャー(キーナン・ウィン)が飛んできた。ロンドンにいる双子の兄からエリザベス王女のご成婚が近いので、兄妹をロンドン公演に招聘したいと。
彼らは喜び勇んで客船に乗るがイギリスのプレイボーイとして名高いブリンデール卿(ピーター・ロフォード)に、エレンが一目惚れしてしまう。船内稽古も、さぼりがちになり心配するボーエン。
ロンドンに着くと既に、ご成婚ムード一色で町中が沸き返っていた。早速ブリンデール卿はエレンを誘って郊外にドライブにいってしまう。
一方、ボーエンはダンサーのオーデションを催すが、そこにアン(サラ・チャーチル)がいて・・・
世紀のご成婚を絡めたゴキゲンなミュージカル作品。
仲の良い兄妹のダンサー・コンビ。ロンドン公演に向けた中で、双方に恋人候補が現れるが、当然、一筋縄ではいかない。
ある意味、定番の健全MGM調ミュージカルの王道だ。2タイプの「ボーイ・ミーツ・ガール」の恋愛が進行し、コメディ要素も織り込んで、多少の紆余曲折はあるものの、明るくハッピーな展開を見せていく。
そうなるとアステアの芸に期待が高まっていくのは当然だろうか。その点、本作でもアステアの魅力が遺憾なく発揮され、実にゴキゲンな気分になれる。
本作を未見だとしても「ザッツ・エンターティンメント」(1974)で登場した『帽子掛けとのダンス』や、部屋を天井まで踊り回る『ビックリハウス・ダンス』は、見たことがある人も多いだろうか。
他にも、揺れる船内のボール・ルームでのコミカルなナンバーや極彩色の群舞が登場するラストのハイチをイメージしたダンス・ナンバーなど楽しいシーンも登場してくる。
コメディ・リリーフで双子役のキーナン・ウィンも上手いし、ヤラシさ醸すピーター・ロフォードだって「大根」ながら存在感はある。
ただ、妹役のジェーン・パウエルだけは、どうにもアステアとのコンビとしては魅力に欠ける印象も拭えない。
それでも興味深いのはイギリス首相だったウィンストン・チャーチルの娘がアステアの恋人役で登場してくることだろう。
彼女は1950年代にイギリスのTVシリーズなどで活躍したようだが、日本では本作と「若き非行の群れ」(1964)程度しかお目見えしていない。
いかにもイギリス風の風貌で、独特の存在感があるが、どこか薄幸感が漂う。
そういった、珍しさも相まって異質の印象を与えるが、スタンリー・ドーネン監督の力量もあり、安心して見て行ける娯楽ミュージカル作品である。