キャバレー – CABARET(1972年)

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スタッフ
監督:ボブ・フォッシー
製作:サイ・フューアー
脚本:ジェイ・ブレッソン・アレイ、H・ホイラー
撮影:ジェフリー・アンスワース
音楽:ジョン・カンダー

キャスト
サリー / ライザ・ミネリ
ロバーツ / マイケル・ヨーク
ハウネ男爵 / ヘルムート・グライム
ウェンデル / フリッツ・ウェッパー
MC / ジョエル・グレイ
ナタリア / マリッサ・ベレンソン
シュナイダー / エリザベス・ニューマン・ヴァーテル
コスト女史 / ヘレン・ヴィータ
ルドウィック / ラルフ・ヴォルター

日本公開: 1972年
製作国: アメリカ ABCピクチャーズ作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

毛色の変わったミュージカル。舞台は戦時下のロンドンから、戦前のベルリンへと変わる。退廃と不安が絡み合う異色作。

ドイツ、ベルリン第一次大戦に敗れ、世界恐慌にも飲み込まれていた1931年のこと。イギリスから貿易業を営もうと語学留学に来た青年ロバーツ(マイケル・ヨーク)。

彼は安いアパートがあると聞き、訪ねた。出迎えたのはキャバレー歌手のサリー(ライザ・ミネリ)だった。大家は今いないが、自分の隣室が空いているから大丈夫だろうと彼を引き入れた。

とはいっても所持金が少ないロバーツ。先行きに不安を抱えながら暮らし始めるとサリーの友人ウェンデル(フリッツ・ウェッパー)が英語を習いたいと言ってきた。確かに一石二鳥かもしれないと承諾した。

そんな彼に興味を示すサリー。以前の嫌な経験から恋人が作れないロバーツに対して、積極的に言い寄っていく。

やがて大財閥の令嬢ナタリア(マリッサ・ベレンソン)が、英語を習いたいと言ってきて・・・

退廃的で不吉な時代を生きる人間らを描く異色ミュージカル。

イギリスからの留学生とアメリカから流れきた歌手。お互いに異邦人である。

しかも、時代はヒトラーが台頭してきた時期でもあり、徐々に権力を持ち始めているという時代。

それに背を向けるように異国で生きようとする二人に、プレイボーイを気取る青年、深窓の令嬢の他、二枚目でいかにも上流階級という男爵が絡んでくる。

歌手のヒロインは、場末のキャバレーでなく、ちゃんとした女優になりたいと願っている。しかし、アメリカ人らしく奔放で場当たり的な性格。一方の青年はイギリス人らしく思慮深いが、どこか情緒不安定。

時代背景を反映させながら起きていく人種や階級差別。

実に嫌味であり嫌気がさしてくるのだが、各々が持ち合わせる階層なり、スタンスがデカダンスを噴出させ際立たせていく内容。

そんな彼女らの人生ドラマに、ヒロインが披露する退廃的で皮肉的なショー場面が挿入される。

特にショー場面は登場人物らの背景や心情を代弁しつつ、それをストレートではなく、時勢に合わせた詩や設定で披露していく。

その全てのショー場面が、退廃的なので複雑な気分にもなる。更に進行役MCが、気味悪い化粧で先導していくので、時代背景同様、観客にも不安感を煽っていく。

そういう点では物語、ミュージカル場面共に統一性があり、均整は保たれる。

それまでには、あまりなかった内容と作劇で激動の時代を背景にしつつも、まったく新しいミュージカルとして確立されているとも感じる。

豪華絢爛なのに、健全さが全く伴わない作品なので、楽しくハッピーになれる映画ではない。

それも、本作が制作された時期がヴェトナム戦争真っ最中。当然、それが反映されているとも感じるし、ストレートではないが、かなりアメリカ政府を皮肉的に連想させるとも感じる。

ライザ・ミネリの力強い歌唱が図太さと脆弱性を並立させ、無鉄砲さと諦念が混じり合うという、実に興味深い作品である。

余談雑談 2019年7月27日
抜けた「犬歯」の差し歯。他にも危なっかしい歯があるから、今、高額な処置をするよりも、プラスティック義歯での対応で様子見と提言してきた歯医者。取り敢えず高額治療は免れたと一安心である。 となれば、暇潰しに明け暮れるだけの日常だ。ストックが減少