ファニー – FANNY(1961年)

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スタッフ
監督:ジョシュア・ローガン
製作:ジョシュア・ローガン
脚本:ジュリアス・J・エプスティン
撮影:ジャック・カーディフ
音楽:モリス・W・ストロフ

キャスト
ファニー / レスリー・キャロン
マリウス / ホルスト・ブッフホルツ
パニース / モーリス・シュヴァリエ
セザール / シャルル・ボワイエ
エスカルトフィッグ / サルヴァトーレ・バッカローニ
オノリーヌ / ジョルジェット・アニス
ブラン / ライオネル・ジェフリース
提督 / レイモン・ビュセール
パニースの長兄 / ヴィクトル・フランサン

日本公開: 1962年
製作国: アメリカ J・ローガン・プロ作品
配給: ワーナー


あらすじとコメント

前回の「暗黒の銃弾」(1962)で巻き込まれ型夫婦役を演じたレスリー・キャロン。フランス出身で、ミュージカル映画のイメージが強い。そんな彼女が複雑な恋に燃える女性を演じた作品。

フランス、マルセイユ港で父(シャルル・ボワイエ)が営むカフェを手伝う19歳になったばかりの一人息子マリウス(ホルスト・ブッフホルツ)は、毎日眼の前に寄港しては停泊する船を見続け、船乗りになりたいと夢見ていた。しかし、彼を溺愛する父親が許すはずもない。

一方で、マリウスの幼馴染で一歳年下のファニー(レスリー・キャロン)は、妹のように可愛がってこられたが、思春期になり、彼を男として意識しはじめていた。お互いに憎からずの思慕は持ち合っているようだが、彼はどうしても船乗りの夢をあきらめきれない。

ところが、彼の父の幼馴染で4ヵ月前に妻を亡くした港一番の金満家パニース(モーリス・シュヴァリエ)が、ファニーを見染め、口説きだしたからマリウスの心中は穏やかではない。

そんな時、停泊中の海洋調査船に欠員がでて、急遽、乗組員が必要との情報が彼の元に飛び込んできた・・・

衝動的な若者らと親世代の関わりを描くラブ・ロマンス作。

海に憧れ、結局、父親に黙って船員になる青年。ところが、出航前夜にヒロインと関係を結んだことから事態が思わぬ方に転がりだす。

処女を捧げながら恋人の意思を優先させようと健気なヒロインは、数年待つ覚悟で見送る。ところが、たった一回の関係で妊娠し、双方の親たちは大騒ぎ。

未婚の母などあり得ぬ時代。そこで「ホワイトナイト」として登場してくるのが金満家の壮年。ヒロインの妊娠を知った上で、自分には世継ぎがいないからと結婚を申し出る。

そんな成り行きは船上の青年には一切伝わらず、ことが進み、遂に男児誕生となる。

そんなときに青年が一時帰国して波乱が起きるのは必然だ。

『若気の至り』と『大人の事情』という、世代間ギャップによる価値観の中で、自分なりの最善を尽くそうとするヒロイン。

夢に賭けたが、赤子の実の父親と解り苦悩する青年。大人たちにも、家の名誉や周囲への配慮が存在する。悪ガキのまま老境を迎える親の友人たちにも、悪辣な輩も存在するから厄介なのだ。

そういったそれぞれの『事情』が、風光明媚なマルセイユの美しい風景の中で繰り広げられて行く。

ある程度、掻い摘んで進行するが、二時間を超える長尺ドラマであり、「ピクニック」(1955)のジョシュア・ローガン演出は、「別撮り」と露呈する立ち位置の変化による流れの中断や、やはり進行を妨げるアップの挿入といったテクニックに走るので、些か興醒めする。

ただし、ほぼロケと思われるマルセイユの息吹は素晴らしく、ヒロインを筆頭にヴェテランのフランス勢の俳優たちが映画を救っている。

ただし、青年役のブッフホルツはいかにものドイツ系なので、違和感を覚えた。

制作サイドのアメリカ人がイメージするフランス人像に沿いつつも反骨的演技を見せるフランス人俳優ボワイエとシュヴァリエの存在が興味深い。

ただし、結果として金満家役を演じたシュヴァリエの洒落た演技が際立つと感じた。

それにどうしても、設定年齢より一回り以上老けて見える出演陣に、そこまで目を瞑るしかないのかと複雑な心境になり、結末といい、妙に内容とは別な感慨に陥る作品。

余談雑談 2019年8月31日
東京は残暑のぶり返し中だが、少しだけ季節が進んだ気がする。「水ぬるむ春」というが、イメージ的には「水冷やむ秋」。 まあ、そんな言葉はないが、徐々に猛暑から開放されつつある東京。そういう時に限って、が。 風呂のガス釜に異常が起きた。素直に着火