快盗ルビイ   昭和63年(1988年)

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スタッフ
監督:和田誠
製作:藤峰貞利
脚本:和田誠
撮影:丸池納
音楽:八木正生

キャスト
加藤留美 / 小泉今日子
林徹 / 真田広之
徹の母 / 水野久美
徹の会社の上司 / 加藤和夫
食品屋の親父 / 天本英世
宝石店店員 / 斎藤晴彦
銀行窓口 / 吉田日出子
マンション管理人 / 奥村公延
刑事 / 秋野太作
白衣の男 / 名古屋章

製作国: 日本 ビクター&サンダンス・カンパニー作品
配給: 東宝


あらすじとコメント

先立ての通常発行でも触れたが、イラストレーターで、大の映画ファンの和田誠が亡くなった。なので久々の番外編は和田誠監督作品を紹介する。氏の作品の中で一番好きな犯罪コメディ。

東京ダイレクトメール発送会社勤務の林(真田広之)が母と住むアパートの真上に、自称スタイリスト兼コピーライターの留美(小泉今日子)が引っ越してきた。天真爛漫な留美は、自分を呆然と見ていた林に声を掛け、ちゃっかり引越しの手伝いをさせる。

翌日も林が帰宅すると下の郵便受けにある新聞をついでに持ってきてくれと平然と頼む。彼女に惹かれている林は、まるで忠犬のように届ける始末。気軽に寄っていけばと誘われ、上がりこむ林。

そこで、彼女は簡単に金儲けをしないかと誘ってくる。訝しがる林に、簡単な犯罪よと軽やかに笑って・・・

魅惑的小悪魔美人に翻弄される小心青年を描くコメディ。

謎の美女と極度の人見知りというか、小心者の青年。

あれよあれとヒロインの口車に乗せられ、且つ、好意を見抜かれ従っていく。

先ずは高級食品店の強盗計画だが、人を傷付けたくないから、銀行入金の途中で、隙を見て金の入ったバッグをすり返えようとする。

如何にも素人の犯罪計画だ。当然、計画通りに進まないのだが、偶然から成功。ところが、いざ強奪金額を調べると経費にも満たない。敢えなく失敗である。

それでもヒロインは挫けずに新たな犯行を計画。それも大強奪とかではなく、あくまで小さな詐欺計画。

何とも微笑ましい内容で進行して行く。

まったく悪気がないコケテッシュなヒロインを小泉今日子が演じる愉悦。ただし、相手役の真田広之は、アクション俳優出身で身体能力抜群なのに不器用で運動神経ゼロという役柄に苦労していると感じた。

脇役には天本英世、斎藤晴彦、奥村公延、名古屋章といった玄人好みが起用され微笑んだ。

監督の和田誠はイラストレーターとして有名で、タイトル・ロゴやらポスターなどを手掛け、劇中歌の作詞、作曲までこなしている。

監督業にしても大の映画ファンだけに、様々なテクニックを駆使し、しかも1時間半という上映時間に収める。

氏の大好きなビリー・ワイルダーをかなり意識しているとも感じるし、ある場面ではヒッチコック的ワンカットの長廻し、ワイプやフェード・アウトにフェード・インといった映画黎明期の手法も好んで取り入れている。

つまり、映画好きにはニヤニヤ、ニコニコしながら安心して見て行ける次第である。

内容も小難しくなく、まるで往年のパラマウント調なウェルメイドなコメディ。

和田の監督第一作は白黒映画で戦後の混乱期を舞台にした、実に地味な「麻雀放浪記」(1984)だったが、第二作目に本作を持ってきた。

ファンとしては、こちらの方が和田誠らしいと感じたし、彼の思い描くものが素直に入ってきた。

やはり、和田を好きな脚本家三谷幸喜が初めて映画を監督した「ラヂオの時間」(1997)は、完全に本作の影響が見られる。

両氏とも大の映画ファンという共通項があり、似通った映画が好きなのだろうとも思った。ゆえに本作と「ラヂオの時間」は、どうしても一対という印象がある。

それに本作では、ミュージカル場面が突然、出てきて驚いた、何故なら、こんな自然に日本映画の中でミュージカルに移行する作品は見たことがなかったから。

後に和田自身が、その場面について触れたことがあり、次回作は出来ればミュージカル映画が良いなと。

実現したらとかなり期待していたが、結局、ホラーと時間軸と上映時間が一致というサスペンス映画の二作が製作された。

それ以降、オムニバスは別として監督作品はないのが残念。

確かに、細心な作劇が鼻に付くが、日本映画でこれぐらい軽妙なコメディ作品は余りないと感じる。

余談雑談 2019年11月1日
今回の都々逸。 「今日も逢って、昨日も逢って 去年が恋しい日記帳」 昔は良かったな、と思う心情か。歳を重ねると、確かにその手の良い思い出ばかりが甦ってくる。 しかも、どうやら未練がましいのは女性よりも男性の方とか。分からなくもない。 それに