blue     平成13年(2001年)

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スタッフ
監督:安藤尋
製作:三宅澄二、岡田真澄、石川冨康
脚本:本調有香
撮影:鈴木一博
音楽:大友良英

キャスト
桐島カヤ子 / 市川実日子
遠藤雅美 / 小西真奈美
今宿麻美 / 中野美恵子
仲村綾乃 / 渡辺千加
水内学 / 高岡蒼佑
年上の男 / 村上淳
世界史の先生 / 河原崎健三
村井彩菜 / 太田綾花
隅田美奈子 / 平山素子
桐島アツシ / 天岸将

製作国: 日本 ミコット&バサラ
配給: スロー・ラーナー


あらすじとコメント

モデル出身の女優は、今や数多い。そんな中、着実に実力を挙げてきていると感じるひとり市川実日子。彼女の初主演作で女子高校生の揺れる機微を静かにじっくりと描く青春ドラマ。

新潟、高岡市女子高に通う三年生のカヤ子(市川実日子)は、授業中、静かに校内に入って来た救急車を認めた。そして保険室から担架に乗せられた雅美(小西真奈美)が搬送される現場を目撃。だが、他の生徒は誰も気付いていなかった。

それからしばらく経ったとき、カヤ子は雅美に声を掛けた。どこか大人びている雰囲気に惹かれからだ。以後、カヤ子は、それまでのグループより雅美と一緒にいる時間が長くなって行く。

雅美は両親が離婚し、現在市内のマンションにひとり暮らしなので、カヤ子を誘うようになった。しかも雅美は、大人びた洋楽が好きで、煙草を平然と吸うようなタイプ。益々、惹かれるカヤ子だが、いつしかそれが恋心へと変貌していることに気付く。

その気持ちが不安になり、偶然知り合った男子高生とホテルへ行ってしまい・・・

地方の女子高生たちの思春期の機微を静かに描くドラマ。

進路も定まらず、弟と一緒に暮らすヒロイン。どこか翳のあるタイプだ。

一方は、暗い過去から校内で浮いているというか、距離を置かれているタイプ。

ヒロインが恋心を打ち明けると相手も同じ気持ちがあると。ただし、微妙な温度差が漂う。

ヒロインは仲良しグループ内の友だちが憧れていた男子と一夜だけの関係を持ち、それが発覚し、旧友との友情にヒビが入る。それを救ってくれたのも相方であり、益々、静かに着実に心惹かれていく。

だが、高校最後の夏休み、相方は、以前問題を起こした大人の男と旅行に行ってしまう。それがどれ程ヒロインの心を痛めつけることか。

ストーリィとしては、さほど起伏もなく、海が見える地方での田舎の少女たちの心の成長をじっくり描く作品。低予算で、地方活性化事業の一翼という作品の印象もある。

原作は同名コミックだが、思春期特有の残虐性と、感情の揺れ幅が大きいと描いていくのが特徴か。

高校最後の夏休みがカギとなり、ヒロインと相方の瓦解と和解にシフトしていく進行。

全編ロケ撮影で風景は瑞々しい。その中でヒロインを演じた市川美和子の『ヘタさ』が、逆に彼女本来の持つ味を開花させ素晴らしい。

以後、何本も彼女の作品を観ているが、出来不出来が激しい女優という印象が勝る。ただし、それは各作品の監督の力量だろうとも思うが。

モデル出身なのに、それを全く意識させない自然体の存在感は瑞々しい。

一方、相方の小西真奈美は、非常に優等生的演技で、真面目に頑張って静かな演技をしてますという「あざとさ」を感じざるを得ない。

それはひとえに市川との相対性の問題であり、市川がベルリン映画祭で主演女優賞を獲ったのも逆に小西の演技あってこそとも感じ、頷ける。

実に地味だし、日本映画特有の『何にもない日常』を田舎の風景の中で描いた、ありきたりの作品ではある。

だが、ラストの二人で夜を明かすシーンの長回しは印象的だ。

それでも、やはり市川の存在感で成り立っている作品だとも感じる。

余談雑談 2020年1月11日
今回の都々逸。 「うちの亭主とこたつの柱 なくてはならぬがあって邪魔」 もしかして、夫婦間のものを選んだのは初めてかもしれぬ。 そもそも『都々逸』は敗者の文学というか、日陰者の人間が未練とか、儚い夢をうたう類。かといって、夫婦間でも良い。