スタッフ
監督:ジェームス・ウィリアム・ガルシオ
製作:ジェームス・ウィリアム・ガルシオ
脚本:ロバート・ボリス
撮影:コンラッド・ホール
音楽:ジェームス・ウィリアム・ガルシオ
キャスト
ウィンターグリーン / ロバート・ブレイク
ジッパー / ビリー・グリーン・ブッシュ
プール / ミッチェル・ライアン
ウィリー / エリシャ・クック
ジョレーン / ジャニーン・ライリー
コロナー / ローヤル・ダーノ
ゼムコ / ピーター・セテーラ
ライカー巡査 / ジョー・サムシル
ヒッピー運転手 / ホーク・ウォリンスキー
日本公開: 1974年
製作国: アメリカ ガルシオ&ヒッツィグ・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
前回の「激突!」(1971)の一年後に日本公開された本作。アメリカの荒涼たる大地で繰り広げられる車両絡みのドラマだが、スリラー的アクションではなく、白バイ警官の話。両作に共通するのはアメリカでは絶対に車を運転したくないと感じさせたこと。
アメリカ、アリゾナモニュメント・ヴァレーを有する広大な土地を管轄する白バイ警官のウインターグリーン(ロバート・ブレイク)と相棒のジッパー(ビリー・グリーン・ブッシュ)。
日々、スピード違反車両や、怪しげな車を取り締まっているが、ウインターグリーンは殺人課の刑事になるのが夢だった。
ある日、二人は砂漠で挙動不審者を発見する。近付くと彼らの知り合いで痴呆症気味の老人ウィリー(エリシャ・クック)だった。異様に取り乱していて、なだめて話を聞くと彼の友人で70歳になる老人が猟銃自殺していると。
慌ててその老人宅に向かう二人。だが、状況に違和感を覚えるウインターグリーン。そこに彼の憧れで殺人課の刑事プール(ミッチェル・ライアン)がやって来て・・・
広大な大自然の中だからこそ際立つ人間の闇を描く佳作。
主人公は刑事に憧れる青年。ただし、背が低く、二枚目ぶっているが、どこか冴えない風貌。しかし、彼の口癖が西部劇映画で有名な「アラン・ラッドと身長が同じ」。
早目にその台詞が登場してきて、以後、西部劇のロケ地といえばの『モニュメント・ヴァレー』が強烈に際立ち、本作は馬を白バイに変えた西部劇だと連想させる。
しかし、本作は完全なる「アメリカン・ニュー・シネマ」である。
その乖離に引き込まれた。主人公の日常を描こうと登場して来るのは、LAの刑事だから見逃せという若い女性連れの輩、当時社会問題であったヒッピー、ヴェトナム戦争帰還後は社会復帰が難しく不運続きだというトラック運転手など、『自分都合』で言い訳する人間ばかり。
一応、黙々と違反切符を切っていくが、夢は私服刑事。老人の自殺に違和感を持ち、憧れの敏腕刑事と捜査に参加することになるが、そこから夢と現実の『乖離』が身に染みて解ってくる展開。
いかにものニュー・シネマだ。物語展開上は、地味でゆったりとした進行なのだが、突然、当たり前のようにモニュメント・ヴァレーの壮大で悠然な風景が画面一杯に拡がってくると、こちらも乖離感を覚醒させられる。
憧れの刑事の価値観と実態。そこにも「乖離」が印象付けられ、人間の小ささを痛感させられた。
進行するにつれ、往年の西部劇への郷愁を感じさせ、ニュー・シネマの流行をも並行させつつ、たかだか人間の一生など100年にも満たないが、価値観と社会通念は激変しているという、まるでどこか幽体離脱して画面を見ているという感じすらする。
ニュー・シネマの先駆的作品「イージー・ライダー」(1969)へのオマージュであり、逆にアンチテーゼをも醸すのは、ヴェトナム戦争がいかにアメリカに影響を与えたか、と背筋を伸ばさざるを得ない。
コンラッド・ホールの見事なまでのカメラワークと共に、忘れ難い佳作となっている。