苦手なくせにギャンブル的なことを。映画関係資料を探そうとネット・サーフィンをして、関係のない古本を見つけた。
タイトルは『吉原夜話』。写真は、箱に入った表紙と背表紙のみで、あとは勝手に内容を想像しろというネット古書店の不親切なもの。
いかにも古そうで、元吉原芸者のインタビューを起こしたものということは想像がついた。だが、ネットで調べてもそれ以上に細かい内容などは見つけられない。
まさにギャンブルだ。芸者遊びは憧れたが未経験のまま人生を終えそうだし、数十年前に地元の老舗バーのマスターに「吉原芸者は別格」と聞いたことがあった。
興味はそそられるし、もし冬の列車旅に行けたら、途中で読むには絶好かもしれぬ。しかも500円で、送料を加味しても実際の古書店ではこの値段はないだろう。
結果、ポチッとしてしまった。数日後に届き、少しだけ読み始めた。いや、驚いた。
昭和39年の出版だが、内容は大正14年に新聞で掲載された江戸生まれの芸者の思い出話。昔の廓話以上に、歴史的読み物だわな。
幼女時代の実際の武家の話から、初代市川猿之助とか。しかも、「御尤も(ごもっとも)」、「一発コツンとお見舞い申す」やら、絶滅した江戸言葉に自分の心をくすぐる言い回し。
成程、平然とそんな話をする芸者相手に遊ぶとなると、大変以外のなにものでもないと。
不意に冷や水を浴びせられ、「顔洗って出直してこい」てな啖呵が聞こえる。やはり、金だけ持って遊びに行っちゃいけない世界だったんだ。
内容以外にも驚くというか、思い出したこともある。まず、本自体の大きさと重さ。それに一枚の紙の厚さ。パートで編集の仕事をしているが、指の感覚からすると現在の二枚分の厚さだ。
しかも一冊で、中古で買ったノートPCより重い。これじゃ旅に携行できないぞ。
でも、ローカル線で寒空を窓越しに感じながら、重いページめくりは楽しそうだ。
だったら、何処へ行くか。なんぞと考えると、今度は旅先探しにシフト。
で、結局、悩みだして読書どころではなくなり、ついでに録画した旅番組で行先を検索しだす始末。
いえいえ、それで良いんです。どうせ、移動や宿泊代金を加算していくと、旅空が一挙に曇る溜息に変わるから。