スタッフ
監督:エドワード・ドミトリク
製作:ジョセフ・E・レヴィン
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
撮影:ジョセフ・マクドナルド
音楽:エルマー・バーンスタイン
キャスト
コード / ジョージ・ペパード
サンド / アラン・ラッド
リナ / キャロル・ベイカー
ピアース / ボブ・カミングス
モニカ / エリザベス・アシュレー
ジェニー / マーサ・ハイヤー
マカリスター / リュー・エアーズ
ノーマン / マーティン・バルサム
ダルトン / ラルフ・テーガー
日本公開: 1965年
製作国: アメリカ パラマウント作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
「クライド・イン・ブルー」(1973)の主人公である白バイ警官の自慢は『西部劇俳優アラン・ラッドと身長が同じ』。ならば、そのアラン・ラッド出演作品にする。彼の晩年の作品だが、存在感が見事。
アメリカ1923年、大会社経営の父親に甘やかされて放蕩息子に育ったコード(ジョージ・ペパード)。父親が急死すると、待ってましたとばかりに世襲を宣言した。
すぐに金目当てで父親の後妻に入っていたリタ(キャロル・ベイカー)に膨大な手切れ金を渡し追い出し、成長産業であるドイツのプラスティック企業と契約を交わそうとしたり、複葉機しかない時代に、旅客機を開発しようと融資を銀行に食い下がったりと八面六臂の行動をとり始める。
しかし、その手法が強引であり相手には絶対服従を課すために、次々と解雇されたり、逃げだす人間も続出していく。
そんな中、父親時代からコードの面倒を見てきて、相談相手でもあったサンド(アラン・ラッド)までが、彼の方針について行けないと言いだし・・・
幼少期のコンプレックスから伸し上がろうとする男を描く重厚な人間ドラマ。
女遊びで新聞沙汰になったり、賭けでもぎ取った複葉機を見よう見まねで操縦したりとワガママ放題な若者。
しかもギャンブル的先読みの才能があり、己の力に絶対の自信があるので、相手が誰であろうと強引にねじ伏せていく。
寝る間も惜しんで働き、旅客機開発や映画会社を買収と多岐にわたって活動していき、やがて「アメリカン・ドリーム」の体現者として君臨していく内容。
モデルは大富豪のハワード・ヒューズと言われており、成程、これほど強烈な性格でないと急伸していけないだろうと感じる。
自分の立身出世のためには、女性は当然として、年上だろうと、長年の知己だろうと蹂躙していく。
しかも、結果それが次々と大成功していくから始末に悪い。人間味は削ぎ落され、狂人のような立ち振る舞いに拍車がかかり、結果、誰も彼を止められず、益々、モンスターとして巨万の富を得ていく。
彼のようなタイプが跋扈できるのは時代背景もあろう。世界恐慌も経験するし、単発の複葉機から旅客機、やがては爆撃機もニーズがでてくると確信し開発に着手。
まったくの門外漢である映画製作もサイレントからトーキーへと変革していくところにも目を付ける。
実に多くの人間が蹂躙され切り捨てられていく。中には、彼に復讐しようと企む輩もいるし、ギャンブル要素が高い映画業界には食わせ者もいる。
ほんの一握りの人間以外は、実に身勝手で感情移入しづらいタイプばかり。そんな人物ばかりが登場してきての2時間半という長尺だが、凝縮された筋運びと強烈なサブキャラ達で飽きさせない。
堂々と主演を張るジョージ・ペパードの鬼気迫る演技は見もの。脇役陣も安定感があるが、中でもアラン・ラッド演じる「最後の西部男」の存在感は圧倒的である。
事実、その役を主人公に据えた映画が製作された。本来はラッドが主演を希望したが、年齢的に不可能で主役は若かりしスティーヴ・マックィーンが務めた。
「ネバダ・スミス」(1966)である。本作と見比べると、成程魅力的なキャラクターだと理解できる。
それを抜きにしても、悪役的キャラクターが活躍する重厚な人間ドラマとして成り立っている作品である。