スタッフ
監督:エットーレ・ジャンニーニ
製作:E・ジャンニーニ、ジュゼッペ・マロッタ
レミジオ・デル・グロッソ
撮影:ピエロ・ポルタルビ
音楽:ラッファエーレ・ジェルヴァッジョ
キャスト
エスポジート / パオロ・ストッパ
コンチャッタ / クレリア・マターニア
シシーナ / ソフィア・ローレン
ブリジダ / マリア・フィオーレ
カペラ / ティナ・ピーカ
グスタフソン / ロリ・ジッチ
ボロを纏った美女 / ナディア・グレイ
プルチネッラ / レオニード・マッシーネ
プルチネッラの息子 / アキッレ・ミーロ
日本公開: 1955年
製作国: イタリア、ルクス・フィルム作品
配給: イタリ・フィルム、NCC
あらすじとコメント
前回の「クロスボー作戦」(1965)では悲劇の人妻役だったソフィア・ローレン。今回も悲劇のヒロインを演じる作品を選んでみた。ナポリの歴史をミュージカル仕立てで綴った異色作。
イタリア、ナポリ荷車に演芸材料を山積みにし、辻々で演奏しては稼ぐエスポジート(パオロ・ストッパ)の一家。妻コンチェッタ(クレリア・マターニア)と、子供が5人もいるが、家を持たず、小銭で何とか生きる日々である。
ナポリという温暖な場所だから出来る生き様なのか。それでも、決して楽ではない。ある日も移動していると突風が吹き、楽譜が風に舞ってしまう。慌てた一家はナポリ湾に落ちた楽譜まで拾いに海に入る始末。
その楽譜の一枚が「ミケレンマ」という譜面で・・・
音楽の都ナポリの歴史的流れを描くミュージカルの佳作。
イタリア統合前、ナポリは何度も他国からの侵略と占領を繰り返されてきた場所である。
それでもバイタリティが漲り、音楽好きの住民性が際立つ。事実、イタリアの中でも『ナポリ民謡』には有名曲が多いことでも知られる。
物語としては、5部構成で描かれる。第1部は1660年の「ミケレンマ」という、サラセン人襲撃による美女の悲劇。それから「プルチネッラ」というナポリ特有の風刺劇の道化師の話。「惚れ薬」は半ば詐欺師の男に媚薬を調合して貰い、意中の青年をモノにしようとする娘の顛末。
「シシーナの恋」はソフィア・ローレン演じる写真モデルが作曲家の恋人よりも女優業の忙しさで隙間風が吹き、悲劇を迎える。「マルゲリータ」は、年頃の娘が若い辻音楽師と恋仲になるのが気に喰わない父親の顛末と続く。
それらを20曲以上のナポリ民謡のみで繋いでいく。
作劇も実に楽しく、風光明媚なナポリのロケに始まり、舞台劇風、暗転するとそれが小劇場での実際の舞台演出と変わっていく。
17世紀の話から、20世紀への突入、第一次大戦、そして第二次大戦後の現代までをブロードウェイ的群舞や、当時の有名歌手の独唱など、実に多彩な演出で進行して興味深い。
未だにイタリアといえば、どんな紀行番組でも必ず流れる「オ・ソレ・ミオ」や「フニクリ・フニクラ」は、実は『ナポリ民謡』であると本作を観れば解る。
それほど日本人のイメージに浸透している名曲ということ。
ただし、イタリア人としては『ナポリ人』は格下扱いであり、もし、海外の人間が日本を代表する楽曲が、例えば「炭坑節」だと思い込んでいて、日本の東京や大阪の生演奏のある店に行き、さも、日本を知っているかの如くリクエストすれば、どのように感じるだろうか。
何人かイタリアの友人がいるが、ナポリ人はそれが正しいとウィンクしてくれるが、他の地方の人間は苦笑するのが習慣であった。
しかし、現実として日本に限らず、世界的に有名な民謡であるのも事実。
それほど人間を惹きつける楽曲であり、他にも様々な楽しい曲やら、暗い曲も登場してきて、ある意味での懐の広さを感じさせる。
アメリカ製のミュージカルとは全く違う印象で、尚且つ、ナポリという独特の地域性と住民性を感じ取れる良作である。