傷だらけの挽歌 – THE GRISSOM GANG(1971年)

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スタッフ
監督:ロバート・アルドリッチ
製作:ジェームス・ハドリー・チェイス
脚本:レオン・グリフィス
撮影:ジョセフ・ビロック
音楽:ジェラルド・フリード

キャスト
バーバラ / キム・ダービー
グリムゾン / スコット・ウィルソン
ヘイガン / トニー・ムサンテ
フェナー / ロバート・ランシング
グラディス / イレーネ・デイリー
アンナ / コニー・スティーヴンス
ブランデッシュ / ウエスリー・アディ
ウーピー / ジョーイ・フェイ
ベイリー / マット・クラーク

日本公開: 1971年
製作国: アメリカ アルドリッチ・カンパニー作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

今回も大恐慌時代の実話を映画化した作品。やはり犯罪絡みが多いのは時代性ということだろう。

アメリカ、カンザス1931年の不況下、三人のチンピラが闇酒場に遊びに来る大富豪の娘バーバラ(キム・ダービー)が5万ドルのネックレスをしているとの情報を得た。当然、強奪しようと近付くが、チャンスを逸し、恋人と車で走り去ってしまった。

二人を追うチンピラたち。やがて、車を無理矢理停車させると彼氏が飛び掛ってきて、慌てた一人が射殺してしまう。こうなればバーバラを誘拐し、身代金を取ることに計画変更。ただし、突然の変更で監禁場所を決めるためにガソリン・スタンドに立ち寄って相談しようと。

ところが、そこで別なギャングのヘイゲン(トニー・ムサンテ)に見つかってしまい・・・

二重誘拐に巻き込まれる少女の姿を追うドラマ。

大富豪の娘でワガママ放題に育った21歳のヒロイン。

彼女の高額なネックレスを強奪しようとした三人組が計画変更で誘拐へ発展。

ところが更に上を行く悪党集団に嗅ぎ付けられ、三人は殺されてしまう。新たな集団は、誘拐犯は殺害した奴らだから自分らの足はつかないと彼女を再誘拐する展開と相成る。

しかも、再誘拐団に異性経験のまったくない青年がいて、美しいヒロインに一目惚れ。当然、更なる「ひねり」が効いてくる展開。

新たなギャング集団のボスは一目惚れ青年の母親。とにかく、このママのキャラが秀逸。頭も切れて豪腕。亭主も仲間も誰も彼女に口出し出来ない。

100万ドルの身代金を要求し、支払われたらヒロインを殺害する。しかも、身代金は人数均等配分するが、札番号は記録されているから、分不相応なことをすればすぐにバレると。なので、マネー・ロンダリングして40万ドルになるが、後に使用してもバレないとか、かなり説得力がある。

更に、あぶく銭で散財するのではなく、女郎屋を共同経営し経済活動して後々まで儲けるわよ、と。当然、誰も何も言えない。

そこに持ってきてヒロイン殺害を指示。ところが、純朴な息子がナイフを母親に突きつけてまで抵抗。この一途な恋愛感情が導火線となり、問題が延焼していく展開。

ヒロインの父親は探偵を雇い、さっさと身代金を支払ったのにも関わらず、娘が戻ってこないので、殺害されたと思い込む。

ところが、娘は純朴でストレートな青年の、決して、暴力的でない口説きに困惑しつつの監禁生活。

探偵が調査を進めると、当初の三人組は殺害され、現在のギャングたちに辿りついて行く。娘の父親には晴天の霹靂である。

しかし、この時期まで生きているとすると、当然、「生娘」状態ではないとも推察する。ここに、時代性を強く感じる。

父親の娘に対してのあからさまな価値観変化である。一方で、娘は「ストックホルム症候群」と呼ばれる、拉致犯との奇妙な心的シンクロニシティを生んでしまっている。

こういったそれぞれの思いが、集約されて行くのだが、かなり厳しい終焉が待ち受ける。

このような複雑なドラマを派手な銃撃戦などを含めて男性映画の雄、ロバート・アルドリッチが作る。

ヒロインの高飛車でワガママな性格から、登場人物誰にも闇があり、それを解決しようとしない個性が存在する。

その点はアルドリッチが好んで描いた設定だが、ヒロインとギャング団の女ボスという、これほど男性よりも女性に重きを置いた作品も数少ない。

時代背景もあるが、世界恐慌という時代が、どれほど市井の人間たちを追い込み、絶望させ、開き直らせて行ったのか。

何ともやるせない作品で、後味も決して良くない力作。

余談雑談 2020年3月7日
どうにも暗い記事ばかりだな。45年も前のオイルショックを想起させるトイレ紙争奪戦やら、使用後のマスクの洗浄の可否など、おい、日本人はどこに来ちまったんだ。 それに、もうすぐ3・11だ。風化させまいと心しているが、確か、あの時も東京の水道水が