スタッフ
監督:ビリー・ワイルダー
製作:ジェイ・ウェストン
脚本:B・ワイルダー、I・A・L・ダイヤモンド
撮影:ハリー・ストラドリングJr
音楽:ラロ・シフリン
キャスト
クルーニー / ジャック・レモン
トラブッコ / ウォルター・マッソー
セリア / ポーラ・プレンティス
ザッカーブロット / クラウス・キンスキー
ハブリス警部 / ダナ・エルカー
エディ / マイルス・チャピン
副支配人 / マイケル・エンサイン
受付係 / ジョーン・シャウィリー
ヒッピーの妊婦 / スージー・ギャラー
日本公開: 未公開
製作国: MGM バーンハイム&ウェストン・プロ作品
配給: なし
あらすじとコメント
今回もジャック・レモンとウォルター・マッソーのコンビで、ビリー・ワイルダー監督作品。しかもワイルダーの遺作となったコメディ。
アメリカ、ロサンゼルス裁判で証言予定の証人二人が殺害される事件が起きた。残るは一人となり、警察は威信をかけ証人を保護していた。
その証言当日、裁判所前のホテルにサラリーマンのようなトラブッコ(ウォルター・マッソー)が大きなトランクを持って現れた。部屋の指定は裁判所の正面が見える5階。実は、彼は前の二人を殺害した殺し屋だったのだ。
ところが、彼の隣部屋に妻を怪しいセックス教祖に寝取られたクルーニー(ジャック・レモン)がチェックインしてきた。クルーニーは近くにある教団内の妻に連絡をし、会いに来させようとしていた。もし、断られれば自殺すると騒ぎ始める。それを知ったトラブッコは堪ったものではない。
協力する振りを見せながら、近付くが・・・
寝取られ男と殺し屋が、繰り広げるコメディ作品。
腕の立つ殺し屋。証人が爆殺されるという冒頭はコメディとは思えないスタート。演じるのはシリアスな悪役も演じてきたウォルター・マッソー。
そこに強烈「構ってちゃん」の自殺願望のある寝取られ男が絡んでくる。
当初こそ、証人を始末するまで拉致監禁で切り抜けようとするが、当然、そんな簡単にはいかない。だからコメディなのである。
要は、苦虫を噛み潰した態の殺し屋が、一々、邪魔される展開。かといって殺人の可否という設定である。成功するのが良いことなのかという不思議な感覚にもなる。
本作は、リノ・ヴァンチュラ出演のフランス映画「殺し屋とセールスマン」(1973・未)のリメイク。成程、だから少し不思議な設定なのだ。
確かにワイルダー作品は、オリジナルではなく舞台劇の映画化が多い作家である。
ただし、映画のリメイクは少ない。しかもフランス映画だ。
そんなオリジナルを捌く脚本は「お熱いのがお好き」(1959)以降のワイルダーとの名コンビI・A・L・ダイヤモンド。
そこに持ってきての名コンビレモンとマッソー。かなり期待したのだが、本作は日本未公開。
タイトルだけは知っていたが未見であった。ビデオで発売されたときは狂喜乱舞した思い出がある。
大好きなワイルダーの遺作でレモンとマッソー共演。ただし、その期待が仇となった。
全員が最盛期を過ぎており、何とも彼ららしくない展開。モタモタ感にエロティックを加味しているが、すべてが中途半端。
以後も、レモンとマッソーのコンビ作は多作されるが、ワイルダーの遺作としては実に残念な印象。
映画自体が衰退し、心意気が残る映画人が参集して作っても、何とも滑稽さに悲しみを感じてしまった。
クラウス・キンスキーという怪優まで招致しているのだが、悲しさが勝ってしまうコメディ。
それでも、ワイルダー監督には「お疲れ様」と声をかけたい作品ではある。