戦争と友情 – DA DUNKERQUE ALLA VITTORIA(1978年)

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スタッフ
監督:ウンベルト・レンツィ
製作:エドモンド・アマーティ
脚本:ジャンフランコ・クレリチ、U・レンツィ
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽:リズ・オルトラーニ

キャスト
ロッセン / ジョージ・ペパード
ファビアンヌ / アニー・デュプレー
ベルナール / ジョージ・ハミルトン
ディーリッヒ / ホルスト・ブッフホルツ
サンダース / ジャン・ピエール・カッセル
マクドナルド / サム・ワーナメイカー
ニコール / キャプシーヌ
ジム / レイモンド・ラブロック
ジャン / アンドレ・ローレンス

日本公開: 1980年
製作国: 伊、仏、英、西独 J・フレード・プロ作品
配給: 日本ヘラルド


あらすじとコメント

前回はバリバリの共産主義者を演じたホルスト・ブッフホルツ。ベルリン出身の彼がドイツ軍将校を演じた作品を取り上げる。EU寄せ集め制作だが、メインはイタリア映画。らしからぬ作劇の戦争映画。

フランス、パリ1939年8月、パリで知り合ったアメリカ人ロッセン(ジョージ・ペパード)、ドイツ人ディートリッヒ(ホルスト・ブッフホルツ)、カフェオーナーのフランス人ベルナール(ジョージ・ハミルトン)、イギリス人サンダース(ジャン・ピエール・カッセル)は、作家のアメリカ人と紅一点の美人ファビアンヌ(アニー・デュプレイ)とともに楽しい日々を過ごし、毎年8月24日に、このカフェで再会しようと約束を交わした。

しかし、すぐに第二次大戦が勃発。米人作家と、ディートリッヒはパリを離れた。そして戦況は一挙に悪化し、英仏はダンケルクで敗走。兵士で参加していたベルナールとサンダースも苦汁をなめていた。

やがてアメリカも参戦し、ロッセンも欧州へ赴くことになり・・・

戦争が引き裂いた友情を丹念に描く佳作ドラマ。

戦前の巴里のデカダンスの余韻。『失われた世代』と呼ばれた作家や画家、遊び人たち。

それぞれが戦争でどのように変貌していくか。カフェのオーナーは、自由フランス軍で殺し屋と呼ばれ、イギリス人は空軍の戦闘機パイロットになる。

ドイツ人は戦車隊の将校、紅一点はレジスタンスの闘士、作家は従軍記者、そして彼らの支えだったユダヤ人貴族の婦人もいる。

主人公はOSSと呼ばれる情報局将校としてイギリスに赴任。だが、遊び人だった父親に反発する息子は危険任務ばかりの特殊要員を志願していく。

ステレオ・タイプながら、それぞれが戦場で交錯したり、すれ違ったり。

誰もが戦前の思い出を引き摺り、各々が約束の日ではないにしろ、懐かしのカフェを再訪したりする。

そんな内容をヒトラーを映したドキュメンタリー映像からダンケルクの敗退など、それなりのスケール感を持って丁寧に追っていく作劇に驚いた。

何せ、監督はイタリア製マカロニ・コンバットでデタラメC級映画ばかり輩出してきたエンツォ・レンツィ。監督名はハンク・マイルストンとイタリア人らしからぬ名前を名乗り、これが本当の自分の才能だと誇示したかったのか。

確かに、登場人物こそ多いが、各々に見せ場がきちんと用意されているところなど、まったくレンツィらしくない。

そんな人物たちが、仲間との再会を果たしたり、仲間の親子関係を知らずに行動を共にしたり。戦争映画なので、当然、死んでいく者もでてくる。

戦闘場面など大雑把な、そこはいかにもレンツィ監督らしい場面もあるが、それらを補うドラマ場面での役者たちの静かな熱演が上手く作用していると感じた。

戦闘場面など他作品からの流用も多いが、人物像が個性的でしかも適役なので、混乱せずに見ていける。

スノッブな人間たちの憧れでもあった戦前のパリから、戦争がどのように個性に影響を与えていくのか。

パリは変わらず、変わるのは人間。それぞれの個性が昇華したり砕け散ったり。

失礼かもしれぬが、イタリア映画らしくない戦争人間ドラマの佳作と言える。

余談雑談 2020年5月30日
昔とは違う日常に戻った。「喉元過ぎれば」とか「病治りて医師忘る」てな人間が増えないことを祈るばかり。当然、自分を含めてだが。 今年の夏は暑いと予報発令だが、その前に梅雨が来る訳である。季節は春や秋の短さは加速がついても、巡るものは巡る。人間