スタッフ
監督:ディック・リチャーズ
製作:エリオット・カストナー
脚本:デヴィッド・Z・グッドマン
撮影:ジョン・A・アロンゾ
音楽:デヴィッド・シャイア
キャスト
マーロウ / ロバート・ミッチャム
ヘレン / シャーロット・ランプリング
ナッティ警部補 / ジョン・アイアランド
ジェシー / シルヴィア・シムス
ブルネット / アンソニー・ザーブ
ロルフ / ハリー・ディーン・スタントン
マロイ / ジャック・オハローハン
ジョージー / ジミー・アーチャー
ジョニー / シルヴェスター・スタローン
日本公開: 1976年
製作国: アブコ・エンバシー作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
今回もシャーロット・ランプリングが、ヒロイン役で登場する作品。探偵小説の超有名私立探偵フィリップ・マーロウが活躍するセンチメンタルなムードに満ちた渋いドラマ。
アメリカ、ロサンゼルス15歳の家出少女を探す仕事の依頼を受けた私立探偵マーロウ(ロバート・ミッチャム)は、無事発見し両親に引き渡した。
その現場を見ていた大男のマロイ(ジャック・オハローハン)が、昔の恋人ベルマを探せと半ば力付くで言ってきた。何でも7年前に銀行強盗をやり、8万ドル強奪したが刑務所に入り、つい先ほど出所してきた、と。その金を彼女が持っているんだ。
直後、いきなり走ってきた車から銃撃を受ける二人。マーロウの機転で、事なきを得たが、マロイという男は頭の弱そうな大男だが、死をも厭わないタイプのようだった。意味が分からないマーロウだったが、彼に興味を持ち、依頼を受ける。
しかし、それが悲劇の始まりだった・・・
哀愁に満ちた探偵映画の佳作。
探偵作家レイモンド・チャンドラーが生んだ、有名キャラクター、フィリップ・マーロウ。
その私立探偵が活躍する原作が書かれた年代に設定された作品。
金を隠し持つ元恋人を探すヤクザ男から捜索依頼を受ける主人公。
ところが何故か、いきなり襲撃されたり、警察は知らぬ顔だったり、逆に、主人公にヤクザ男の所在を吐かせようと娼館の女主人から拷問を受けたりと、何やらきな臭い事件に巻き込まれていく展開。
ただ、ストーリィ自体は時代性もあり、ドンデン返し的妙味などはない。しかし、実に当時のムードが再現され衣装から車、安ホテルやボロ家など、実に得も言えぬムードを醸して見事。
それだけで不器用そうな探偵が生きていた時代、つまり不便さと力付くの大らかさが混在する中でどう生きるか、もしくはどう生き残るかが鮮明に浮かび上がる。
情報量も少なく、情報伝播速度もさほど早くない。その中には人間が考慮したり逡巡したりする時が流れている。そのリズム感。
何よりも主役を張るミッチャムの堂々たるマーロウ振りが印象的。
チャンドラー作品は何度か映画化され、様々な俳優が演じたが、本作のミッチャムが一番キャラクターに近いと言われた。
共演者も見事であり、いかにもファム・ファタールらしさを醸すシャーロット・ランプリングの妖艶さを筆頭に、西部劇俳優として印象深い作品に多数出演しているジョン・アイアランド演じる警部補。落ちぶれた中年女のシルヴィア・マイルズ、マーロウの良き理解者である新聞スタンドの男ジミー・アーチャーなど、実に役者層の厚さを感じる起用である。
ハードボイルド小説らしい一人称の独白で、メジャーリーガーの連続ヒット記録更新やら、ヒトラーがロシアに侵攻したとか、当時の雰囲気を醸す一翼にもなっている。
原作のイメージを崩さずに、往年の『当たり前』を一様に格好付けて描いていく進行は、ツボに嵌った。
どうにもクールというよりも、センチメンタリズムが先行し、格好付ける男の姿は、実に痛々しい結果を生むと教えてくれる佳作。