スタッフ
監督:カーティス・ハンソン
製作:A・ミルチャン、M・ネイサンソン、他
脚本:ブライアン・ヘルゲランド、C・ハンソン
撮影:ダンテ・スピノッティ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
キャスト
ヴィンセンス / ケヴィン・スペイシー
ホワイト / ラッセル・クロウ
エクスリー / ガイ・ピアース
リン / キム・ベイシンガー
スミス / ジェームス・クロムウェル
ハッジェンス / ダニー・デヴィート
コーエン / ポール・ギルフォイル
パチェット / デヴィッド・ストラザーン
ローウ / ロン・リフキン
日本公開: 1998年
製作国: アメリカ リージェンシー作品
配給: 日本ヘラルド
あらすじとコメント
前回の「黄昏のチャイナタウン」(1990)同様、1950年代初頭を舞台にした犯罪ドラマにしてみる。独特の世界観が漂う佳作。
アメリカ、ロサンゼルスロス市警には、優秀な成績で巡査から刑事に格上げになったエクスリー(ガイ・ピアース)、人気刑事ドラマの監修として職務よりも著名人として幅を利かすヴィンセンス(ケヴィン・スペイシー)、直情型だが、か弱い女性の味方ホワイト(ラッセル・クロウ)など、個性的な面々が勤務していた。
しかも警察はでっち上げや強引な捜査などは日常茶飯事であり、下世話なスキャンダル誌と共謀してワイロを受け取るのも当たり前だった。
クリスマス・イヴの晩、刑事仲間に怪我をさせたというメキシコ人チンピラ・グループが連行されてくると所内で酔った警官らが集団で暴行事件を起こしてしまう。それが新聞沙汰になり、社会体面上の生贄が必要と相成った。出世を夢見る正義派エクスリーは、ホワイトの相棒で定年間近の刑事を対象者にと進言。結果、上層部にその意見が通り、彼は出世するが、同僚らからは疎まれる存在となってしまう。
そして、解雇させられた元同僚刑事が、カフェで6名の客と一緒に射殺される事件が起き・・・
映画の都で繰り広げられる実に、いびつで嫌な人間ドラマ。
個性的な刑事たち。証拠隠滅や捏造は、当たり前という時代。
TV放送が勢力を伸ばし始め、大人気番組は刑事ドラマ。
しかし、そんな華やかさとは違い、裏では、地方からスターを夢見てやって来た若い男女を食い物にする魍魎たちも存在する。
中には、整形してまで人気女優に近付け、客を取る高級娼婦組織、男色家の上級市民に若い体を預け、後に脅迫のネタに使う若僧もいる。
そして大きな犯罪の匂いも立ち始め、次々と人が死んでいく展開。
推理ドラマとして幾つもの伏線が張られるが、ある程度の映画ファンなら前もって想像がつく『匂わせ』も多いと感じるだろう。
俳優陣も個性派で、それぞれが誰とも被らないように細心の注意を払って演じている。
しかし、何よりもこだわっているのは「1553年」当時の雰囲気。服装、車両、署内、高級住宅街の内外セット、そして完璧なまでにバックで流れるスタンダード・ジャズの数々。
設定当時のジャズが好きな自分としては、9割の楽曲を知っていたので、成程、この場面で誰それのこの曲を流すかと、ヘンなところで膝を打った。これはウディ・アレン作品群にも言えるのだが。
ヒロイン役のキム・ベイシンガーは「ヴェロニカ・レイク似」、他にも「リタ・ヘイワース」や「エヴァ・ガードナー」など、当時の映画を見ている観客なら、ふと映る『そっくりさん振り』に微笑むだろうか。しかし、「ラナ・ターナー」に関しては大笑いしたが。
ある意味、ターナーの扱いのように観客をミスリードして行く、監督の「してやったり感」が浮かんで、若干、引き気味になってしまったのは残念。
アカデミー作品賞を筆頭に、様々な賞を総ナメにした作品であり、確かに、当時のメジャー系ハリウッド映画としては良く出来ているとは思う。
特にヒロインのベイシンガーを映す色調など、犯罪映画ながら、どこかダグラス・サークのロマンス映画のティストを醸しだして妙味もある。
キャストもそれぞれが熱演だ。だが、それが逆に、どうにも50年代の男たちの面構えと感じないから不思議。
それでも力作である。