梅雨が明けない東京。それでも先立て、通院途中にセミの鳴き声が聞こえた。梅雨明けも近いのだろう。
そして行った病院では、こともあろうに、てなことが待ってやがった。
前回行ったときに、骨折部に超音波を当てて治療する機械を貸し出すので、自宅で毎日治療してくれと言われた。確か、以前の肩の骨折時も使用したよな。
そして整形外科で順番を待っていたら、受付の人から診療室ではなく、隣のベッドがある処置室へと言われた。
担当女医さんが登場し、再骨折に関し、尊敬する恩師が特別診療の名目で一日来院したので、こちらのレントゲンを診せ相談したと。
そのドクターは、瞬時に『ギプス』で固定し、それでも「ダメ」ならワイヤーで縫うような再手術がベストと返答したと。
そう言うやいなや、女医はすぐに石膏付き包帯で足首をグルグル巻きにした。
数分で固まると、今度は電動ノコを持ち出してきた。おいおい、何が起こるんだ。
そして職工用のメガネなど掛け、ウィーンと音を立てながら患部を切り出した。
嫌な音が施術室に響き渡る。医師ではなく、完全に職工の顔付きだぜ。それでも、実際に脚肉を切らないかと、嫌な恐怖感も芽生えたが。
流石に大丈夫で、ホッとすると、一部を切り離し、患部に油性マジックで丸印を書いた。ここに毎日超音波を当ててねとのお達し。
そういうことだったか。まあ、通気口だと思えば、足蒸れ臭も緩和されるか。
でも、超音波治療が不調なら再手術かよ。しかも、今になって例の絵に描いたような頑丈なるギプス姿か。一体、どうなってるんだ自分の人生。
続いて内科へ。生活習慣病の数値は注射と投薬で低下傾向で一安心。ところが、飲酒が祟ったか尿酸値がイケないですねと。
血圧も気に入らないし、先ずは尿酸値を下げる薬を処方するので様子見と仰る。もしかすると血圧の薬も必要になるかなと脅す。
しかも尿酸値を下げる薬は人によって痛風のような痛みを誘発するとも仰る。その場合は、痛み止めで対応ですねと当然のように続ける自分より太っている内科医。
普通、痛みが出る薬などあり得ないし、そうなれば即座に中止なのではと言いたくなったが、ぐっと我慢した。
なんでも数値で人を判断しやがって。個体差だってあるぞ。
それにしても、こうして薬漬けになって行くのね、人間って。何種類かの薬だけで数値のバランスを取り、管理する。
何故だか信用し切れない自分がいる。曇り空で嫌な湿気に満ちた街を通って帰宅。
するとどうだ。自室のあるビルのフロア廊下にセミの死骸が。梅雨明けもしてないのに、既に生涯を終えたセミ。しかも、抜け殻でなく本体。
何の巡り合わせか、はたまた更なる嫌な予兆か。
なんて人生だよ、まったく。