スタッフ
監督:ロバート・ワイズ
製作:ロバート・ワイス゛
脚本:ジョン・O・キレンス、ネルソン・ギディング
撮影:ジョセフ・ブルン
音楽:ジョン・A・ルイス
キャスト
イングラム / ハリー・ベラフォンテ
スレーター / ロバート・ライアン
ロリー / シェリー・ウィンタース
バーク / エド・ベグリー
ヘレン / グロリア・グレアム
バーテン / シシリー・タイソン
バーの女 / ゾーラ・ランバート
モーリアリティ / ルー・ギャロ
アニー / メエ・バーンズ
日本公開: 1960年
製作国: ハーベル・プロ作品
配給: 松竹セレクト
あらすじとコメント
名脇役ロバート・ライアン。プライベートでは、民主党系ハト派だったが、映画では真逆の役柄設定も多かった。今回は、いかにも彼らしい悪役を演じた犯罪ドラマ。
アメリカ、ニュー・ヨークブロンクスの安部屋に住む元警官ながら、一年の服役を経て出所したばかりのバーク(エド・ベグリー)を訪れるスレイター(ロバート・ライアン)。彼も殺人と傷害で二度服役した、影のある男だ。
そんなスレイターにバークは銀行強盗の話を持ちかけるが、強盗は主義に反すると断ってしまう。そうはいっても、スローターは定職もなく愛人ロリー(シェリー・ウィンタース)のヒモ生活であった。
一方でバークは、彼とは別に、クラブ歌手で黒人のイングラム(ハリー・ベラフォンテ)を呼び、強盗計画に誘う。競馬の借金で首が回らなく、離婚した妻子への慰謝料も滞っているが、やはりヤバい橋は渡りたくないと断った。
だが、起死回生を賭け、大きなレースに金を注ぎ込んだが、結局負けてしまう。その夜、金貸しのボスに呼びだされ、返済しないと、妻子共々殺すと脅されたイングラムは・・・
人生の負け犬である三人の男が繰り広げるノワール映画。
借金で首が回らない黒人男。周囲から年寄り扱いされ、愛人から同情されている中年男。
問題は、両者とも相手の皮膚の色を毛嫌いする『差別主義者』ということ。
そして主犯格は元警官で、ターゲットは田舎町の銀行。しかし、最大の問題は、誰もが計画的犯行を実行したことがないという点。
まあ、ありがちな設定ではある。
映画の進行としては、参加を持ちかけられた主役二名が、すぐには同意せず、私生活で悪あがきを繰り返す姿を描写し、やがて、どうにもならなくなって、計画に参加するという展開。
その参加決定までの過程で半分以上の時間が費やされるのだが、所詮、負け犬の男たちが自らの性格で陥っていくので、メリハリが考えられているが、そこはどうしても脇が甘いと感じてしまった。
出演者たちも当時の適材適所であり、犯罪映画で何度も同じような役で見たことがある面々。
ただし、主役のハリー・ベラフォンテは、人気歌手からの転身であり、本作が初めての悪役。
自慢の喉も披露し、楽しませてくれる。中でも、登場場面は少ないが、ヒモであるライアンを誘惑する、淋しげな子持ち女役で、ご贔屓女優のひとり、グロリア・グレアムがセクシーな下着姿で登場するのも嬉しい。
監督はロバート・ワイズ。本作の翌年に大ヒットミュージカル「ウエストサイド物語」(1960)を発表するのであるが、それまでは本作のようなアクション系人間ドラマを得意としていた。
全体的に、こじんまりとした印象の本作だが、一番印象に残るのは、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)による、全編を通して流れる緊張感溢れるジャズ。
犯罪映画にモダン・ジャズという選定はフランス映画の「死刑台のエレベーター」(1957)でのマイルス・ディヴィスを起用したあたりからの主流で、ワイズ監督作品としては、本作の前年の「私は死にたくない」(1958)で、既に活用している。
白黒の犯罪映画にモダン・ジャズというのは、音楽そのものが放つ緊張感が、切り取られるカットに息吹を与えると思っている。
ある意味、ストーリィ運びが冗漫でも、そこそこ見せてしまう相乗効果がある。
本作もラストのいささか強引で派手なラストに至るまで、何てことない内容だが、音楽が妙に盛り上げて一気に見せてしまう作品。